2023 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン修飾異常がげっ歯類の統合失調症様行動異常を生じるメカニズムの解明
Project/Area Number |
21K03136
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
古家 宏樹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (90639105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 光彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 客員研究員 (60240040)
三輪 秀樹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (80468488)
國石 洋 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 特別研究員 (60805034)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 統合失調症 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 / グルタミン酸脱炭酸酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では多様な背景を有する統合失調症の近因としてGABA合成酵素GAD の減少によるGABA神経伝達の機能低下を想定し、その原因として脳内の遺伝子発現を制御するヒストン修飾の異常が存在する可能性について検証を行った。統合失調症モデルとして新生仔期にグルタミン酸N-methyl-D-aspartate (NMDA) 受容体拮抗薬MK-801を投与されたラットを使用し、統合失調症様行動異常の出現を確認したうえ、脳内のGAD67の発現やアセチル化ヒストンの定量を試みた。新生仔期MK-801投与ラットは、感覚ゲーティング障害や作業記憶、社会的行動の障害などの統合失調症様行動異常を示した。また同ラットの内側前頭前皮質ではGAD67陽性細胞の減少が観察された。一方、前頭前皮質や海馬においてアセチル化ヒストンの定量を試みたが、市販の測定キットではヒストンの抽出および測定が困難であった。またヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) の阻害がGAD67発現および新生仔期MK-801ラットの行動に及ぼす効果について検討した。結果、HDAC阻害剤の反復投与はGAD67のmRNA (Gad1) を増加させなかったが、新生仔期MK-801投与による学習・記憶の障害を改善した。本研究では、統合失調症モデルである新生仔期NMDA受容体遮断ラット脳内においてヒストン修飾異常の証拠を得られず、GABA機能低下との関連は明らかにならなかった。また一方で、HDAC阻害剤の投与がGAD67発現を変化させずに学習記憶能力の改善をもたらしたことから、少なくとも同モデルの学習・記憶障害においてGAD67の減少は直接的な原因ではない可能性が示唆されるとともに、HDAC阻害剤にはGad1以外の遺伝子発現を促進することによって統合失調症の認知機能障害を改善する作用がある可能性が示唆された。
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