2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03139
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷内 通 金沢大学, 人間科学系, 教授 (40324058)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アカハライモリ / ラット / キンギョ / 食物嫌悪条件づけ / 潜在制止 / 注意 / ワーキングメモリ / 放射状迷路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は両生類であるアカハライモリにおける注意の制御機能や記憶能力について,ラット・キンギョ等の他種と比較することを目的とする。本年度の成果の概要は以下の通りである。 (1)アカハライモリの食物嫌悪条件づけにおいて,食物CSの先行提示による潜在制止減少について検討した。食物CSの提示後に塩化リチウム溶液を腹腔投与した。その結果,15回にわたる食物CSの先行提示は条件づけをやや阻害するものの明確な潜在制止を示さないことを発見した。(2)アカハライモリの食物嫌悪条件づけにおけるCS-US間隔の効果について検討した。0時間遅延で生理食塩水の投与を受けた統制条件と比較した結果,CS-US間の遅延時間が0時間の場合だけではなく,6時間の場合にも有意な嫌悪条件づけを確認した。CS-US間の遅延が24時間の場合でもCS摂取量の低下を認めたが,統計的に有意な水準には達しなかった。(3)アカハライモリにおける4方向放射状迷路を作成し,予備実験を行った。その結果,偶然水準以上の遂行成績の向上を確認した。(4)キンギョにおける同種他個体数の弁別を検討するための予備的な調査を行った。水槽の両端に設置した2つの観察水槽に異なる数の同種他個体を入れて接近反応を検討したところ,より多数の個体群へ接近する傾向があることを発見した。(5)ラットの放射状迷路課題における一時的な空間記憶の保持について,強制選択-自由選択テスト間の遅延時間を操作した実験を行った。その結果,従来の最長記録である25時間を大きく超える72時間にわたる保持の証拠を得た。さらに匂い手がかりを厳密に統制した追試において96時間保持の証拠を得た。(6)ラットの放射状迷路課題における順向性干渉について検討した結果,試行間間隔を2時間に延長すると順向性干渉の解除が生じること,および老齢ラットでも順向性干渉の増大は生じないことを示す結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アカハライモリの食物嫌悪条件づけにおける潜在制止効果およびCS-US遅延時間の効果について検討し,期待する成果を得た。アカハライモリの放射状迷路学習を検討するための予備的な調査を行うことができた。アカハライモリと比較するためのラットにおける放射状迷路課題において,予想を上回る記憶保持能力を明らかにすることができた。キンギョの検討については,計画に対して検討状況がやや遅れたものの,アカハライモリとラットにおいて計画を上回る成果を得たため,全体としては概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
アカハライモリの食物嫌悪条件づけにおける潜在制止の不在,およびCS-US間の遅延時間が24時間の場合の嫌悪条件づけの存在については,統計的な検定力の不足により明確な結論を得るに至っていない。このため追加の実験を行い,これらの現象の存在について明確な結論を得る。キンギョにおいては迷路学習に長期間の訓練を要するため,適した飼育環境の確立を進める。ラットの放射状迷路学習については,長時間遅延によるwin-shift傾向の低下が成績に影響している可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため学会がオンライン開催となったため,予定した国内旅費を使用しなかった。次年度の学会の開催形態に応じて旅費を執行する。また英文校閲費用を計上したが,年度内に原稿が完成しなかったため,使用しなかった。原稿は既に完成したため,次年度繰り越し分から執行する予定である。
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