2022 Fiscal Year Research-status Report
Common mechanisms for illusory circular shape distortions induced by prolonged and flashed presentation.
Project/Area Number |
21K03145
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
櫻井 研三 東北学院大学, 教養学部, 教授 (40183818)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 図形変形錯視 / 図形残効 / 順応 / 曲線検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
長時間観察による順応で生起する一種の残効と考えられていた円図形の変形錯視と同様の効果が,円図形とそのグラデーション図形を交替させるフラッシュ呈示により短時間で生起することを発見し,ポリゴン化効果と名付けた。本研究では,ポリゴン化効果の生起機序の解明を目的とし,ポリゴン化効果が先行研究の長時間観察での順応にもとづく図形変形錯視と同じ機構に依存するか否かについて検討している。 2022年度は,グラデーションの幅を段階的に操作してポリゴン化効果に最適な範囲を特定することで受容野サイズを推定し,特定の大きさの線検出器との関係を明らかにする実験の実施を予定していた。しかしながら,コロナ禍の影響に加えてキャンパス移転もあって実験の実施が困難な状況が続いたため,2021年度に提案した,修正された理論モデルの精緻化を現象観察を中心として継続した。修正モデルでは,1)隣接する曲線検出器同士では逆方向の曲率の出力が順応後に相対的に強くなること,そして2)それらの逆方向の出力はフラッシュ呈示でトリガーされ振動(交替)すること,という2つの制約条件を付与することで,丸みを帯びた角の部分が形成されると同時にフラッシュに同期した多角形の位相(角の位置)変化による仮現運動が生み出す見かけの回転運動を説明した。曲率の異なる二つの曲線検出器の出力同士の交替が見かけの回転運動の原因ならば,一方の曲線検出器を事前に順応させると図形変形錯視で知覚された多角形の向きは事前順応で呈示された図形の向きと一致せず,見かけの回転運動も生起しないと予想される。現象観察ではこの予想と一致する結果が得られたことを国内学会で報告した。 この他,錯視現象の理論モデルの構築について2021年度にオンラインの国際学会に参加したのを機に,海外の錯視研究者とのつながりができ,多感覚統合の研究成果の発表に参加する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題では,図形変形錯視(ポリゴン化効果)の生起機序の解明を目的とし,ポリゴン化効果が先行研究の長時間観察での順応にもとづく図形変形錯視と同じメカニズムに依存するか否かを実験により明らかにする計画を進めてきたが,2021年度,2022年度までコロナ禍が続き,感染防止対策のために換気の不十分な暗室での視覚実験を実施できなかったことに加え,2022年度後半はキャンパス移転の準備の影響で,実験を中心とした研究活動の中断を余儀なくされた。研究活動の中心を理論モデルの構築とその精緻化に転換して研究を継続しているものの,実験によるデータ収集が十分にできていないことから,研究全体の進捗状況は「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,閉鎖した暗室での実験実施と,研究成果を発表する国際学会への参加が可能になったことから,ここ2年間の遅れを取り戻せるようエフォート率を上げた取り組みを続ける。ポリゴン化効果を説明する修正モデルでは,ある曲率を持つ曲線への順応の結果として,曲率が高くなる方向と低くなる方向のふたつの出力が存在し,それらがフラッシュに同期して交代する(振動する)ことにより見かけの回転運動が生じる可能性を指摘した。この可能性を検証する実験準備を進めており,その結果を8月の国際学会で発表する。 また,当初の研究計画で予定していた(1)網膜偏心度の違いによるポリゴン化効果の生起潜時の変化,および(2)誘導グラデーションの幅の違いによる生起潜時の変化,の2点についての実験も並行して進め,2023年度内の成果発表を目指す。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナ禍の影響で予定していた国際学会での発表等の活動が制限されたのと同時に,所属する大学の学部改組とキャンパス移転で研究活動のエフォート率が極端に低下したことから,当初計画より大幅に支出額が減少した。2023年度はこの部分を補うべく,バイアウトによりエフォート率を上げて研究計画の遅れを取り戻せるよう予算の使用を進める。
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Research Products
(5 results)