2022 Fiscal Year Research-status Report
外見変化が顔印象と潜在的偏見に及ぼす影響ー平均顔によるプロテウス効果の検証
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21K03150
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Research Institution | Shizuoka Eiwa Gakuin University |
Principal Investigator |
永山 ルツ子 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 教授 (40326434)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 平均顔 / プロテウス効果 / 印象 / IAT / 偏見 / 人種 / アバター / 不気味の谷 |
Outline of Annual Research Achievements |
見慣れた肌の色を持つ自人種よりも他人種の顔を区別するのは難しい(他人種効果)が,キャラクターやアバターの外見を変えることによって,ユーザの考え方(偏見など)や行動に影響を与えることが示唆されている(プロテウス効果)。本研究は,①モーフィング技術(平均顔)を用いて,自分の顔らしさ,ならびに②肌の色などの外見を変化させることによって,顔の印象(実験1)と潜在的偏見に及ぼす影響について(実験2),また③自尊心などの性格特性による影響について(実験3),さらに④VR事態下での影響について(実験4),検討する。実験1では,実験参加者に自分の顔を撮影したものを提供してもらい,自己顔とした。白色人種,黒色人種,黄色人種の顔に自己顔有と無しでそれぞれ平均顔を作成し,自己顔の有無が人種ごとの平均顔の印象に及ぼす効果についてオンライン実験で検討した。その結果,肌の色や自分の顔の類似性の度合いによって印象が異なることが示唆された。特に,自分に似ている平均顔については,人種の肌の色に関わらず,印象度が低くなったことから,自己顔に対する一種の不気味の谷現象が生じた可能性が示唆された。実験2では,オンラインによる潜在連合テスト(IAT)を用いた研究より,IATの D スコアがマイナスを示したことから,他人種に対して潜在的な回避傾向が示された。実験3では,仮想的有能感尺度や自尊感情尺度をオンライン実験で課し,その後IATとの関連性について検討した結果, IATのD スコアと仮想的有能感尺度得点との間には弱い相関がみられたが,自尊感情尺度得点とIAT,仮想的有能感尺度得点と自尊感情尺度得点間には相関はみられなかった。これらのことから,仮想的有能感は潜在的な偏見や差別意識の指標として有効である可能性が示唆された。実験4については,VR事態下でのアバターによる実験を行うため,現在準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は,これまで一貫して顔の知覚・認知について研究してきており,実験刺激に関しては実際の顔写真やCG,モーフィング技術(平均顔画像)などを使用して研究を行ってきたことからも,実験に関しては必要十分な技術を既に有している。また,これまでの実験刺激に関しても,実際の顔写真やCG,平均顔画像などを使用して研究を行ってきたことからも実験刺激作成についても問題はない。R3年度の前期(4月から9月)には,顔画像収集を行い,平均顔(モーフィング顔画像)を作成した。R3年度の後期(10月から3月)には,作成した顔画像を用い、①オンラインによる顔の印象評定実験(実験1),②オンラインによる潜在連合テスト(IAT)実験(実験2),また③オンラインによる仮想的有能感尺度及び自尊感情尺度などの性格特性実験(実験3)を行った。当初は実験2については,スタンドアローンのコンピュータ上で対面実験を検討していたが,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,対面実験が困難なため,オンライン実験が実施可能な実験ツールを代替購入し実験を行った。そのため,実験1~3までは,すべてオンライン上で実験を行うことになった。実験では,顔画像を刺激として使用するため,顔画像収集の際には,刺激提供者に電子媒体(google forms)によるインフォームド・コンセントを得,実験の際にもデータを含めて個人情報の取り扱いに配慮する旨説明した。なお,顔画像収集及び実験にあたっては,所属大学の研究倫理委員会にて研究計画等審査申請書を提出し了承された。 実験2のオンライン実験代替があったため,進捗が半期ほど遅れている。現在,「自己顔」の平均顔画像を用いたアバターによるVR事態下での実験準備中である(実験実施は2023年5月~2023年8月を予定)。その実験のため,所属大学の研究倫理委員会にて研究計画等審査申請書を提出し承認待ちである。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため,R3~R4の前期の授業の多くがオンライン授業となった。そのため,対面実験が実施困難だったため,オンライン上で画像収集,および実験を行うことになった。R3~R4年度のオンライン実験によるデータ収集が思うように進まなかったため,進捗が半期ほど遅れている。R5年度の前期(2023年5月~2023年8月を予定)は,実験4の「自己顔」の平均顔画像を用いたアバターによるVR事態下での実験を行う予定である。現在,R4年度に購入したVRヘッドセットを用いて,平均顔によるアバター作成並びに提示の準備が整いつつあるため,アバターによるVR事態下におけるコミュニケーション実験を実施するため,同様のVRヘッドセットを追加購入予定である。実験4については,VRヘッドセットを実際に装着してもらうため,使い捨てのVRフェイスマスクなどを利用するなど,新型コロナウイルス感染拡大防止に務めながら実験を行う予定である。実験1~3の研究結果をまとめたものについては,学会にて発表(2023年7月と9月)予定であり,既に申請済みである。なお,仮に実験4の達成が困難な場合でも,自己顔比率に関するモーフィング画像(平均顔)およびモーフィング技術の基礎データとして公表できるため,研究上の意義があると思われる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は以下の2点である。①新型コロナウイルス感染拡大のため,当初予定していた国内学会がすべてオンライン学会となったことから,当初予算を計上していた旅費3日分(交通費・宿泊費・日当含)等が未使用となったこと,②R4の前期の授業の多くがオンライン授業となり,対面実験が実施困難だったため,オンライン上で画像収集,および実験を行うことになった。そのため,予算を計上していた対面実験用の実験参加者謝金および実験補助が未使用となったことがあげられる。R5年度については,当初予定していたアバターによるコミュニケーションツールは,zoomだけではなく,仮想空間(メタバース)サービスの一つであるヴァーチャルオフィスツールによる実験計画をたてている。そのため,生じた当該助成金を利用して,VRヘッドセット購入並びにヴァーチャルオフィスツール利用料等を申請する予定である。また,今年度より対面実験に切り替えて行うため,新型コロナウイルス感染拡大防止用に使い捨てのVRフェイスマスクなど対策品も購入予定である。
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