2021 Fiscal Year Research-status Report
総実代数体上のアーベル拡大の不変量に関する総合的研究
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21K03181
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
青木 美穂 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (10381451)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 正規整基底 / 代数的不変量 / ガウス周期 / アルティンのL関数 / チェビシェフの偏り / 計算数論 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) アーベル数体の正規整基底とガウス周期に関する研究を行った. 令和3年度は特に基本的な素数次巡回体の古典的ファミリーに対し, 研究を行った. Shanksの3次巡回体に対しては, 2組(すべて)の正規整基底に対し,定義多項式の根を用いた表示を得ることができ, また得られた2組のうち,どちらがガウス周期であるか求め, これによりShanksの3次巡回体に含まれるガウス周期の最小多項式を求めることができた. この結果は3次巡回体の導手が定義多項式の判別式の平方根と一致する場合, Lehmer, Chatelet, Lazarus らによって得られており, これら結果の一般化と考えることができる. またLehmerの5次巡回体に対しても, すべて(無限組)の正規整基底を求めることができた. これは正規整基底の生成元が定義多項式の1つの根と“1”の有理整数上の一次結合で表される場合を扱ったSpearman-Williamsの結果の一般化にあたる. 以上の結果については国内外の研究者と情報の交換を行い, 他の素数次の場合についても研究を進めている.
(2) 暴分岐アーベル数体の整数環のガロア加群としての構造は,Leoploldtによって得られている. 今年度はLeopoldtの原著論文や関連論文を読み, その応用や一般化について模索した.
(3) 古典的な未解決問題である「チェビシェフの偏り」と呼ばれる素数の偏りについて, 東洋大学の小山信也氏と共同研究を行い, 大域体の有限次ガロア拡大に対する素イデアルの偏りとアルティンのL関数の中心点における収束性との関係について,明示的な結果を得ることができた. またデータ解析の専門家である帝京大学の吉田崇将氏(令和3年3月までは東洋大学所属)と共に,得られた理論結果に関して計算機を用いた多くのデータを収集した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要(1)の Shanksの3次巡回体に関する結果は,橋本優氏(島根大学大学院生)との共著論文にまとめ, 現在投稿中である. またLehmerの5次巡回体に関する結果も橋本優氏(島根大学大学院生)との共著論文として現在まとめている. 研究実績の概要(3)の大域体の有限次ガロア拡大に対する素イデアルの偏りとアルティンのL関数の中心点における収束の関係について得られた結果は, 論文にまとめ現在投稿中である. またこの研究結果について, 2月に開催された「第15回ゼータ若手研究集会」で招待講演を行った. さらに共同研究者である小山信也氏は,12月に開催されたRIMS共同研究(公開型)「代数的整数論とその周辺2021」において,この研究に関する発表を行った.
以上より, 当該年度の研究はおおむね順調に進展したと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要(1)の素数次巡回体に関する正規整基底とガウス周期に関する研究について,今年度研究を行った3次,5次の場合の手法をもとに, 一般の素数次について研究を行う. これまでに得られている結果については,令和4年度に開催される国内の研究集会で発表する予定である. 研究実績の概要(2)の暴分岐拡大の場合の理論については, 先行研究についてさらに調べる必要があると考えている. 令和4年度中に代数的不変量に関する応用について進展させたい. 研究実績の概要(3)で行った研究の過程で, アルティンのL関数の中心点での値が正規整基底の有無など代数的な情報を多く含むことが分かった. このことについてさらに先行研究を調べる必要があると考える. また, 令和3年度に得られた素イデアルの偏りの定式化に現れる各種定数の評価についても考えたい. この研究についても令和4年度に開催される国内の研究集会で発表する予定である,
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Causes of Carryover |
2021年度は,コロナ禍の影響でいくつかの研修集会が延期または中止になったことや,開催された研究集会がオンラインで行われたため, 予定していた国内旅費の使用が無かった. また,海外渡航も難しい状況のため,海外旅費の使用も無かった。2022年度は,コロナ禍の状況が改善されれば,2021年度使用予定だった旅費を使用する予定である.
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Research Products
(2 results)