2022 Fiscal Year Research-status Report
種々の多重ゼータ値における有限類似と対称類似の統一理論の構築
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21K03189
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小森 靖 立教大学, 理学部, 教授 (80343200)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 有限多重ゼータ値 / 対称多重ゼータ値 / 統一多重ゼータ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
多重ゼータ値を定義する級数を有限で打ち切って有限体上の数列とみなす有限多重ゼータ値と, 通常の多重ゼータ値のある種の対称化である対称多重ゼータ値の間には一対一対応があるという予想は金子・Zagier 予想と呼ばれており, 現在最も重要な研究目標とされている. この予想に対し, これまでに統一多重ゼータ関数という新しい対象を導入し, これらのゼータ値がある意味で同一の対象であることを示している. 今年度はこの予想が成立するであろう原理のより深い考察のため, 一般の凸多面体と線形形式の有限多重ゼータ値から, 対称多重ゼータ値を構成する方法を考案した. 具体的には有限多重ゼータ値の contour 積分表示から, 積分路の方向を変更することによって統一多重ゼータ関数を構成し, その特殊値として対称多重ゼータ値を定義する. この方向の選択にはある程度自由度が存在するため, 有限多重ゼータ値から得られる統一多重ゼータ関数には任意性が生じるが, 非正領域の特殊値はそれに依存しないことが示される. この方法によって Euler-Zagier 型の対称多重ゼータ値が復元されること, および非正領域ではこれらの間の対応が自動的に成立することを示した. また, この多重ゼータ値は凸多面体に付随することから自動的に凸多面体の理論で現れる概念が組み込まれる. 一般の凸多面体が Delzant の場合以外は統一ゼータ関数は Lerch 型になることがわかった. 今後は凸多面体の理論との融合などについて研究したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有限多重ゼータ値と対称多重ゼータ値について一般の凸多面体と線形形式に拡張することによって, 凸多面体の理論との融合が視野に入ってきており, 理論の大きな発展が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
一般化された有限多重ゼータ値から統一多重ゼータ関数が得られ, 対称多重ゼータ値との対応が確認されたが, 非正領域以外の値や, その解析性などまだわかっていない点が多い. 次年度以降これらについて研究を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で多くの出張が中止になったため次年度使用額が生じた. 次年度に研究会などが再開された際や、計算機の購入などに使用する予定である.
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