2022 Fiscal Year Research-status Report
Arakelov geometry over adelic curves
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21K03203
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森脇 淳 京都大学, 理学研究科, 教授 (70191062)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 代数幾何学 / アラケロフ幾何 / アデリック曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
パリ大学の陳氏と共同研究を進め、アデリック曲線上でのヒルベルト・サミュエル公式の証明が完成したことを受け、応用面の研究に取り組んだ。その成果として、当分布定理、ボゴモロフ予想、力学系における基本定理の拡張という結果を得た。 具体的には以下の通りである。体 K は加算濃度を持つ体であるとし、その適正なアデリック構造 S = (K, (Ω,A,ν),ψ) を固定する。X は K 上の幾何学的に既約なd次元の射影代数多様体とし、(L, φ)は X 上の L が豊富であるアデリックな直線束とする。X 上に K 上有理的である生成的な点の列があるとし、その点の高さが、X の高さに収束すると仮定する。このとき、大雑把に言って、点から定まるディラック型の測度が X と L から定まる測度に弱収束するというのが当分布定理である。これは、代数体の場合、1990 年代後半に知られていた定理であるが、今回は、アデリック構造とそれに関するヒルベルト・サミュエル公式を用いることで、加算濃度を持つ体というかなり広い体上で成り立つことの証明が完成した。これの帰結として、その体上でのボゴモロフ予想が導かれることに成功した。さらに、従来、算術的力学系は代数体上での研究が中心であったが、アデリック曲線上での高さ関数の理論を用いることで、加算濃度を持つ体上でも同様のことができることが判明した。その一つとして、算術的力学系における前周期的点の集合の稠密性と高さ関数の関係に関する基本定理が、加算濃度を持つ体上でも成立することがわかった。 以上のように、研究は驚くほど順調に進んでいるのだが、書き上げた論文が186ページもあり、出版にいたるまでは、まだ数年かかると予測され、その点が成果の公表という観点から懸念材料である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アデリック曲線上のアラケロフ幾何の研究は、数年をかけて、交差理論、ヒルベルト・サミュエルの公式、ボゴモロフ予想と順番に確立していく予定であったが、2021年後半から2022年にかけて、共同研究が爆発的に進展し、当初の計画以上に進展していると言える。ただ、交差理論の論文が152ページ、ヒルベルト・サミュエルの公式とボゴモロフ予想の論文が186ページと大部であり、その出版が遅れる可能性があるのが懸念材料である。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでに、確立したアデリック曲線上のアラケロフ幾何の研究のさらなる整備と応用を考えて行きたい。例えば、当分布定理においては L が半豊富という条件か課されており、ネフで巨大という条件下で成り立つのではないかと予想されている。Luo 氏の研究により、スロープの有界性という条件下では成り立つことがわかっている。いずれにしろ、成立条件を弱めることは大きな課題である。応用面としては、算術的力学系への新理論の適用を考えたい。従来は特殊化という難しい手法で証明していた結果の多くは、アデリック曲線上のアラケロフ幾何の利用により、身通しのよい証明ができるのではと考えている。
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Causes of Carryover |
かなり状況はよくなったが、コロナの影響で出張を控えていた。Zoom を活用して共同研究は進められたが、大きな支出になる出張費として、研究費を利用できなかった。来年は、10月にフランスのルミニーで行われる国際研究集会に招待されており、今後、順調に使用できると考えている。
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