2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03229
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
久本 智之 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (00748345)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ファノ多様体 / ケーラー・アインシュタイン計量 / 安定性 / モンジュ・アンペール方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
代数多様体の標準計量と幾何学的不変式に由来する安定性の概念には密接な関係があると考えられており、Yau-Tian-Donaldson予想と呼ばれている。2010 年代、特に重要なFano多様体に対して、この領域に大きな発展がもたらされた。この領域では微分幾何・代数幾何・複素解析学の融合が進んでおり、今後さらなる進展が期待される。Fano多様体についてもまだ分かっていないことは多く、特に「標準計量の量子化」や「最適退化」の構成が重要な課題と考えている。
このような観点から、今年度も引き続きFano多様体の最適退化に関する研究を行なった。特に、C. Xuらが最適退化の代数的な構成方法を得たことを受け、今年度はこれらの手法の習熟に務めた。とりわけ、Birkar氏によるcomplementの理論がこの種の問題に応用されたことは衝撃であった。これら最新の研究動向についてまとめた論説を雑誌「数学」に寄稿した。今後は、C. Xuらの構成方法と久本による乗数イデアル層を用いた漸近的な構成との比較検討を行う。
また、ベクトル束のHermiteファイバー計量全体が成す空間に関する研究を行なった。特に、Hermite-Einstein計量の存在問題に対する変分法的なアプローチの定式化を進めた。正則ベクトル束のHermite-Einstein計量は偏極多様体のKahler-Einstein計量と類似の関係にあるので、今回の研究は今後偏極多様体の幾何学的量子化を研究する際に役立つと期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
C. Xuらによって最適退化の代数的な構成が得られた。この構成は代数幾何の最新の結果を用いる難解なものであり、キャッチアップに時間を要した。乗数イデアル層による構成との比較や幾何学的量子化について研究がやや滞ったことには、コロナ禍による研究交流機会の減少も少なからず影響していると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
・C. Xuらによる付値論的な構成方法と久本による乗数イデアル層を用いた漸近的な構成方法との比較検討を行う。 ・偏極多様体の幾何学的量子化に関して、Kahler計量全体が成す空間に対する分配関数の有限次元近似を計算し、漸近挙動を決定する。 ・Hermite-Einstein計量の存在問題に対する変分法的なアプローチの定式化を完成させる。似た手法がHiggs束などにも拡張できないか試みる。正則ベクトル束のHermite-Einstein計量は偏極多様体のKahler-Einstein計量と類似の関係にあるので、両者の比較を行う。特に、前者の幾何学的量子化を考察することで後者の研究のヒントを得る。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により対面形式での研究集会が激減したため、出張旅費を必要としなかった。
|