2022 Fiscal Year Research-status Report
対称空間の一般化およびその極地と対蹠集合の幾何学的研究
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21K03250
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
酒井 高司 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30381445)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 対称空間 / 等質空間 / 対蹠集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
調和写像の一般化として,二重調和写像に関する研究が近年盛んに進められている.我々は,擬Riemann多様体間の写像に対して,第二基本形式の不変関数から積分不変量を導入し,それらを汎関数とした変分問題について研究を行った.第二基本形式の2次同次不変多項式から,二重エネルギー汎関数を含む積分不変量の族を考え,それらの第一変分公式を導出した.このとき,第二基本形式の2階共変微分として与えられる(0,4)型テンソル場の縮約を用いることで,これら2次の積分不変量に関するEuler-Lagrange方程式を統一的に表した.第二基本形式の2次同次不変多項式全体のなす空間は,第二基本形式の2乗ノルムおよびテンション場の2乗ノルムによって張られる.一般に2次同次不変多項式から定まる積分不変量のEuler-Lagrange方程式は4階の偏微分方程式になるが,その中でEuler-Lagrange方程式が2階の偏微分方程式に帰着されるものがスカラー倍の違いを除いて唯一つ存在することを示した.我々はこの積分不変量をChern-Federerエネルギー汎関数と名付け,Chern-Federerエネルギー汎関数の臨界点を与える写像をChern-Federer写像と呼んだ.さらに,Riemann多様体内の部分多様体で,包含写像がChern-Federer写像となるものとしてChern-Federer部分多様体の概念を導入した.我々は,Riemann空間形内の部分多様体がChern-Federerになるための必要十分条件を与え,Chern-Federer部分多様体の基本的な性質を調べ,具体例の構成を行った.特に,球面内の等質な等径超曲面の中でChern-Federer部分多様体になるものを決定した.これらの研究は,秋山梨佳(東京都立大学)および佐藤雄一郎(工学院大学)との共同研究による.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により,擬Riemann多様体間の写像に対して,第二基本形式の2次同次不変多項式から定まる積分不変量に関する第一変分公式を得た.特に,Chern-Federerエネルギー汎関数のEuler-Lagrange方程式は2階の偏微分方程式に帰着されることを見出した.さらに,Chern-Federer写像の例として,Riemann空間形内のChern-Federer部分多様体を調べた.得られた結果は,秋山-佐藤との共著論文として Osaka Journal of Mathematics に掲載されることが決定している.2022年9月にウィーン大学(オーストリア)にて開催された Differential Geometry Workshop 2022 に参加し,共同研究者の秋山が研究発表を行った.また,2022年11月に高松にて開催された The 2nd Shot of The 13th MSJ-SI "Differential Geometry and Integrable systems"において酒井が研究発表を行った.これらの研究集会において,当該分野を専門とする研究者達と意見交換および議論を行った. Γ対称空間および一般化されたs多様体に関して,大野晋司(日本大学)との共同研究を進めた.また,2022年9月にアウグスブルク大学(ドイツ)を訪問し,アウグスブルク大学の研究者達とΓ対称空間とその対蹠集合に関する共同研究を行った. 2023年3月に大阪公立大学にて The 3nd Shot of The 13th MSJ-SI "Differential Geometry and Integrable systems" を開催し,国内外の研究者達と最新の研究情報を交換するとともに,今後の研究の方向性について検討を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
Γ対称空間および一般化されたs多様体の幾何学の基礎理論について研究を進める.対称空間および正則s多様体に関する先行研究を一般化されたs多様体に対して拡張すること目標とする.具体的な空間において,特殊なΓ対称空間の構造を持つものが存在することが分かってきた.これらのΓ対称空間の極地と対蹠集合について詳しい研究を行う.これにより,Γ対称空間および一般化されたs多様体の対蹠集合の幾何学的意味を明らかにすることを目指す.また,外的Γ対称空間の部分多様体としての幾何学的諸性質に関する研究を進める. 写像の積分不変量の幾何学的変分問題に関する研究をさらに進展させる.秋山-佐藤との共同研究では,擬Riemann多様体間の写像に対し,第二基本形式の不変関数から積分不変量を導入し,その変分問題について議論した.今後は,調和写像および二重調和写像の理論を基に,これら積分不変量に関する幾何学的変分問題の理論を展開する計画である.Chern-Federerエネルギー汎関数はEuler-Lagrange方程式が2階の偏微分方程式になるという解析的に顕著な性質を持つことを明らかにした.今後はさらにChern-Federerエネルギー汎関数の幾何学的性質について研究を進める計画である. 本研究課題によりセミナーおよび研究集会を計画する.東京都立大学幾何学セミナーに本研究課題に関連する研究者を招き,講演を行ってもらう.2023年度には幾何学シンポジウムおよび台湾・韓国と共同で国際研究集会を計画している.これらの研究集会において,関連する国内外の研究者たちと議論と情報交換を行い,本研究課題を活発に推進する計画である.
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Causes of Carryover |
2023年3月に大阪公立大学において The 3nd Shot of The 13th MSJ-SI "Differential Geometry and Integrable systems" を開催した.ハイブリッド形式での開催であり,海外からの参加者も多数あった.本研究課題において,何人かの研究者に講演を依頼したが,事情により来日できなくなりオンラインでの講演となった外国人研究者がいた.このため予算計画に大幅な変更が生じた.繰り越した予算は,2023年度に開催する研究集会や東京都立大学幾何学セミナーのために使用する計画である.
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