2023 Fiscal Year Research-status Report
Construction of a generalized quantization of Poisson manifolds and its extension to infinite dimensions
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21K03258
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
佐古 彰史 東京理科大学, 理学部第二部数学科, 教授 (00424200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 憲明 立命館大学, 理工学部, 授業担当講師 (00399073)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 行列模型 / 非可換空間 / 場の理論 / 可積分系 / Grosse-Wulkenhaar模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画では23年度-24年度にはGrosse-Wulkenhaar模型の量子化のアプローチについて研究する計画であった.23年度ではまず,4月までに共同研究者の鹿俣氏との研究を通して,Grosse-Wulkenhaar型のスカラー場の理論の派生形として,ポテンシャルをΦ^3とΦ^4の両方を持つ模型を提案し,その摂動論を構築し,さらに分配関数を厳密に求め,それをもとに多点関数の厳密解もある種類の場合に与えた.このように厳密解が求まる場合があるのは,KdV階層を持つ背景に由来する.その後さらにGrosse-Wulkenhaar模型の提唱者である,Harald Grosse氏とRaimar Wulkenhaar氏らとの共同研究を,ウィーン大学に併設されたシュレディンガー研究所に4月から8月までの5か月ほど滞在し,進めることができた.Grosse-Wulkenhaar型Φ^4理論は,従来より可積分性との関連が示唆されてきたのだが,その背景にある構造が不明であった.まずN体の調和振動子系の関係をウィーンでの共同研究で明らかにした.また,帰国後にN体の調和振動子系の一般化であるCarogelo模型との関係が行列模型をエルミート行列から実直交行列へ変えることで得ることができた.また,これら調和振動子系とCarogelo模型との対応関係を用いて,ビラソロ代数の表現を構築することにより,分配関数の満たす偏微分方程式の列を構築することにも成功した.これらの成果は23年度中に論文として出版された. また,全くGrosse-Wulkenhaar模型とは別の路線で研究段階の最初から行っている,局所対称性を持つケーラー多様体の変形量子化に関しても,特に複素2次元の一般の変形量子化を求めるなど進展があった.これは奥田氏との共同研究によるものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長年の謎であったGrosse-Wulkenhaar模型と呼ばれる行列模型の可積分性のある側面が解明されたという観点と,また全く別の予想外の可積分系と非可換空間上の場の量子論の対応関係が発見されたという観点から23年度は著しく進展したといえる.この点だけでは「当初の計画以上に進展している」を選んでもおかしくはない.しかし,一方で当初計画のもう一つの柱であった,ポアソン代数全体の空間を含む量子化の圏についての研究については,22年度にその定式化を提示できたという進展以来,研究を進められていない.また場の量子論を含む無限次元の量子化への一般化という研究の方向性についても,計画では謳っているわけであるが,上記のような行列模型であらわされる場合の具体例ではなく,一般論としての無限次元空間での量子化の定式化など,可能ならば試みたいと考えていた課題についてまでは手が回らなかったという状況である.それほど行列模型のアプローチが大きく進展しているということではあるが,バランスを考慮して上の判断としている.
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Strategy for Future Research Activity |
23年度のブレークスルー以来,当初の計画を超えて大きく進展している行列模型(Grosse-Wulkenhaar模型やそのバリエーション)については,継続して良好な共同研究を進めるのが良いと考える.23年度のような,長期間滞在しての共同研究を進めるには予算的にも時間的にも困難があるため,6月と7月に2回ウィーンに出張し,共同研究の方針や詳細について議論してくる予定を立てており,研究を進めて行く予定である.また,すでに得られた結果については,各種国際会議(6月のブルガリア,7月のプラハ,9月のギリシャ)での発表を行う計画をたてている. 一方で,ポアソン代数の全体を含む量子化圏のなかでの量子化の一般化についての研究も1年越しで再稼働する予定である.現在のところ抽象的な議論と,よく知られた例の再現にとどまっているため,新規性のある具体例への応用が期待されている.したがって,具体的な予測可能な理論としての物理理論へ応用できるようにという方向で,先行研究の計算結果などをフォローしつつ検証を始めており,24年度から25年度にかけて成果を出したいと考えている. また,自分が世話人で行っている研究会において,上記の可積分系からの進展が大きいことも考慮し,その分野からの講演者を招待して情報収集と研究討議を行うことで,さらに研究が加速するように取り計らっていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
23年度中に予定していた研究分担者との研究打ち合わせが,スケジュールが合わずに実施することができず,たまたま遭遇した研究会での簡単な打ち合わせをするに留めている.そのため次年度使用とすることにした. 24年度に研究代表者の所属する東京理科大で,研究会(Poisson幾何とその周辺 24)を12月に開催することになる.その研究会の共同の世話人でもある,本研究の研究分担者の池田氏(立命館大学)に理科大に来ていただく旅費と滞在費として使う計画になっている.
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Research Products
(16 results)