2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03266
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
千葉 優作 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (90635616)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ケーラー多様体 / ラグランジュ部分多様体 / ボーア・ゾンマーフェルト条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケーラー多様体上の豊富な正則線束の正則切断に対して、正則線束をテンソルして行った時の漸近的な振る舞いを研究した。具体的にはケーラー多様体上のケーラー形式が豊富な正則線束のチャーン形式となっているとき、ラグランジュ部分多様体を考える。ラグランジュ部分多様体上では豊富な線束が自明になるとき、そのラグランジュ部分多様体はボーア・ゾンマーフェルト条件を満たすという。このときL2ノルムが1となる正則切断のボーア・ゾンマーフェルト ラグランジュ部分多様体上での下限を考え、その全体の上限が漸近的にはボーア・ゾンマーフェルト ラグランジュ部分多様体の面積を使って評価できることを示した。これはさらにケーラー多様体が射影代数多様体であったり、リッチ曲率が下から抑えられているシュタイン多様体である場合は正則切断の下限の下からの評価も得られ、漸近的に収束する値を求めた。これは射影代数多様体のベルグマン核の点における漸近的な評価をラグランジュ部分多様体上へと拡張した結果と考えられる。証明はボーア・ゾンマーフェルト ラグランジュ部分多様体を解析的部分多様体で近似し(ホイットニーの定理)、その解析的部分多様体で正則切断を評価することによる。解析的部分多様体上で考える理由は、正則切断の上からの評価には劣平均値の定理のようなものが必要であり、劣平均値の定理を証明するためには複素モンジュ・アンペール方程式を解く必要がある。この複素モンジュ・アンペール方程式を解くために解析的な設定が必要なのである。これにより上からの評価ができる。下からの評価を導く際は、ヘルマンダーのL2評価を用いて、よい評価式を満たす正則切断を構成することによる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボーア・ゾンマーフェルト ラグランジュ部分多様体上での正則切断の漸近的な評価式を得た。この結果はベルグマン核の点における評価を部分多様体上へと拡張したものと考えられる。ベルグマン核は滑らかな切断から正則切断への射影を定め、正則線束の多くの情報を含むものである。またその漸近的な展開を求めることはケーラー・アインシュタイン計量の存在の問題と関係し、多くの研究がなされている。今回の研究により部分多様体上でのベルグマン核の類似を考えることができるようになり、新たな発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究結果によりケーラー多様体におけるボーア・ゾンマーフェルト ラグランジュ部分多様体上における正則切断の漸近的な評価を得られたが、この評価が漸近展開することが可能かを調べる。ベルグマン核の各点における漸近展開の公式は既に知られており、この結果の類似がラグランジュ部分多様体でも成り立つかどうかを調べる。射影代数多様体上のボーア・ゾンマーフェルト ラグランジュ部分多様体であれば類似の漸近展開は示されている。その証明には超局所解析が使われており、本研究の多変数関数論的な証明とは全く異なる方針である。ヘルマンダーL2評価や複素モンジュ・アンペール方程式といった多変数関数論的な手法を使って、射影代数多様体に限らずシュタイン多様体のような非コンパクトな状況で漸近展開が成り立つかを研究する。また、漸近展開が得られたなら、その係数の幾何学的な意味を研究していく。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症による研究集会のオンライン化によって旅費が使われなかった。次年度は対面の研究集会が開催される予定なので参加し、旅費として使用する。
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