2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03272
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
林 正史 琉球大学, 理学部, 准教授 (90532549)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 確率過程論 |
Outline of Annual Research Achievements |
CME+分布の密度関数に関する研究を行なった。CME+分布とは非負の無限分解可能分布で、レヴィ測度が絶対連続で、その密度関数が完全単調関数であるものである。CME+分布はBondesson族に属する分布と呼ばれることもある。一次元の一般化された拡散過程の初到達時刻や、逆局所時間の分布はCME+分布であることが知られている。昨年度に、山里眞氏(琉球大学)と竹内敦司氏(東京女子大)との共同研究で、CME+分布の密度関数の時空間に関する有界性、および時間発展させた際の減衰の速さを調べたが、この減衰の速さはあまり精度が良いものではなかった。本年度は、山里眞氏(琉球大学)と竹内敦司氏(東京女子大)と、より精度の高い評価を考案した。新たに得られた評価では、正側安定分布では最適な速さではないものの、ガンマ増加レヴィ過程の場合は最適な減衰の速さになることが分かった。
エレファントランダムウォークの極限定理に関する研究も行った。エレファントランダムウォークは、Schutz and Trimper(2004)により提案された模型で、過去の自分の歩みを記憶するランダムウォークの一つである。近年、多くの研究者たちにより研究がなされている。特に記憶の効果を表すパラメータpが、時間発展させた場合のエレファントランダムウォークの挙動にどのような影響を与えるかが、この模型の研究の中心的な話題になっている。超拡散的(pが1/2より大きい場合で、過去の歩みと同じ行動を取ろうとする傾向が強い)である場合は、スケール変換を施したエレファントランダムウォークがある確率変数に収束することが知られている。この極限との誤差について、中心極限定理が成り立つことが知られている(Kubota and Takei(2019)). 本年度は、この中心極限定理についてのモーメント収束の速さを調べた。特に、2次モーメント、および3次モーメントでの収束の速さを具体的に計算することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CME+分布については、その密度関数の減衰の速さをより正確に評価することができた。また、エレファントランダムウォークについては、超拡散的な場合における、極限との誤差に関する中心極限定理について、3次までのモーメントについて収束の速さを調べることができた。この結果から、帰納的に高次のモーメントの収束の速さを示すことが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
CME+分布の密度関数の減衰の速さについては、これまでの手法では最適な漸近挙動が得られない場合がある。そのような場合に、より良い評価をえるために振動積分の精密な漸近解析の手法を模索する。エレファントランダムウォークについては、超拡散的な場合の極限分布の研究、停止がある場合のエレファントランダムウォークの極点定理に関する研究、正側滞在時間の極限分布に関する研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響を受けて、オンラインで開催される研究集会やセミナーが増えたため、旅費の使用が極端に減った。 研究集会やセミナーでは、講演以外にも研究に関する情報交換の場になっているため、対面で開催される研究集会やセミナーに可能な限り参加し、繰り越した分を使用したい。
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