2021 Fiscal Year Research-status Report
バナッハ空間における単位球の幾何学的構造の研究とその応用
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21K03275
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
三谷 健一 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (00468969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小室 直人 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30195862)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バナッハ空間 / 幾何学的定数 / ノルム不等式 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の実績は以下のとおりである。 1. バナッハ空間の幾何学的定数の代表的なものとしてvon Neumann-Jordan定数やJames定数がある。これらは幾何学的構造を調べるのに有効な定数であり、現在国内外の研究者によって幾何学的定数間の研究が進められている。本研究では、この研究の手法を調査することによって、他の幾何学的定数の研究の考察を試みた。特に、一般化した内積の対称性度合いを表す定数であるskewnessを考察し、単位球面上の区間の長さを表すcharacteristic of convexityとの関係を不等式の形で導出した。この不等式から直接バナッハ空間のskewnessが2未満ならばcharacteristic of convexityが2未満、すなわちこの空間が一様非四辺形性であることを示すことができる。さらに、Baronti-Papini(1992)による、skewnessとmodulus of smoothnessとの関係を表す不等式に関して、狭義な不等式を持つ条件をchraracteristic of convexityを用いて与えた。この結果はLinear Nonlinear Anal. 7 (2021)に掲載された。また、この研究に関して日本数学会年会及び実解析学シンポジウム2021において講演を行った。 2. Day-James空間の一般化であるBanas-Fraczek空間のvon Neumann-Jordan定数を考察し、特にpが2未満の場合において定数の値を計算した。さらに、von Neumann-Jordan定数とcharacteristic of convexityとの関係をこの空間の下において考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バナッハ空間のskewnessに関する結果はvon Neumann-Jordan定数やJames定数の結果と比較して少ない。今回他の幾何学的定数との関係を与えることができたのは大きな進歩といえる。この研究をきっかけにバナッハ空間の構造研究や不動点理論への研究に繋がることが期待される。具体的な空間における定数の値はその定数自身の性質を知るうえで貴重な情報となることが多いので、定数の計算を継続して行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果を踏まえ、今年度以降に取り組む主要な課題は以下のとおりである。 1. 有限次元ノルム空間におけるskewnessを計算する。三谷-斎藤-高橋(2016)では端点ノルムをもつ有限次元空間のskewnessを計算した。この計算で行われた手法を再度検討を行い、他のノルム空間において定数の計算を行う。 2. バナッハ空間の幾何学的定数は上記以外にも様々存在するのでこれを調査しながら幾何学的定数の相互関係や具体的な空間における定数の計算の研究を継続して行う。 3. バナッハ空間における三角不等式の精密化に関する論文を調査し、種々のノルム不等式の一般化・精密化への応用を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる影響により、出張予定であった研究集会(RIMS研究集会、日本数学会年会、実解析学シンポジウム2021)が中止またはオンライン開催になった。また、研究分担者などとの研究打ち合わせも中止した。次年度以降は研究集会の対面実施が行われる予定なので成果発表を行い、また研究打ち合わせも再開する予定である。
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