2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03278
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
横田 智巳 東京理科大学, 理学部第一部数学科, 教授 (60349826)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 走化性方程式 / 解の漸近挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 走化性方程式という生物の集中現象を記述する数理モデルを研究対象としている. 特に,方程式の解が時間大域的に存在するかどうかという問題に対して, 方程式に現れる関数や定数に対してどのような条件を課せばよいかということを明らかにしていく. このような問題は, 様々な設定の下で様々な研究が分散して行われているのが現状であり, それ打破するような研究を目指している. その中には, まだ解明されていない問題の解決も含まれている. 2021年度は,次の2つの研究を中心に実施した.
研究1.誘引反発型走化性方程式系の解の挙動に関する研究 研究2.ロジスティック項をもつ退化型走化性方程式系の解の爆発に関する研究
研究1については,大学院生の千代祐太朗の協力により,誘引項と反発項の強さを表す指数や係数の大小関係により,解の挙動を完全に分類することができた。研究2については,大学院生の田中悠也の協力により,非退化型拡散の場合からの極限操作によって難点を回避することができ,解の正則性や一意性が保証されていない状況下での解の爆発に対する新しい手法を構築することができた.いずれの研究に対しても,得られた成果を論文にまとめ,専門誌に投稿し掲載が決定した.また,「RIMS研究集会 発展方程式の広がり:理論的基礎から実践的応用まで」,「2021年度日本数学会年会」などで研究成果を発表した.さらに,ドイツ・パーダーボルン大学のFrederic Heihoff氏との共同研究を実施し,拡散項と走化性項をもつ捕食者・被食者モデルの解の挙動を決定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
誘引反発型走化性方程式系の解の挙動に関する研究については,解の有界性と爆発を完全に分類できたことが計画以上の成果であった。また,ロジスティック項をもつ退化型走化性方程式系の解の爆発に関する研究については,モーメント解という新しい解の概念の導入や一意性が保証されていない解の延長に関する議論を取り入れるなど,新規性の高い研究成果が得られた.なお、前者の研究は大学院生の千代祐太朗との共著論文としてまとめ,国際専門誌「Zeitschrift fur angewandte Mathematik und Physik」に,後者の研究は大学院生のの田中悠也との共著論文としてまとめ,国際専門誌「DISCRETE AND CONTINUOUS DYNAMICAL SYSTEMS SERIES B」に掲載が決定した.さらに,ドイツ・パーダーボルン大学のFrederic Heihoff氏との共同研究では,比較的扱いやすい空間2次元の場合だけでなく空間3次元の場合も考察対象とし,拡散項と走化性項をもつ捕食者・被食者モデルの解の(時間無限大における)漸近挙動を決定するなど,幅の広い研究を実施できた.また,2022年度の研究に向けて,走化性項のついたLotka-Volterra型競合モデルに対する予備的考察を,京都教育大学の水上雅昭氏と共同で進め,解の有界性を導くための鍵となる評価の導出や解の爆発を導くためのモーメント型不等式の導出についての見通しを立てることができたことから,当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究に向けて,特に走化性項のついたLotka-Volterra型競合モデルに対する予備的考察が進んでいることから,順調に進めらえると考えている.今後の研究の一層の推進を図るために,国際会議「Equadiff 15」(2022年7月・チェコ)などの国際研究集会での研究成果発表やドイツ・イタリアの研究者達との国際研究交流を行うことを考えている.具体的には,爆発解の導出の際に鍵となる解のプロファイルの研究を精密に行っているドイツ・ハノファー大学のMario Fuest氏と研究代表者の大学院生の田中悠也が研究交流を行うことで研究の推進が期待できる.また,一般的な枠組で誘引反発走化性モデルの研究を行っているイタリア・カリアリ大学のGiuseppe Viglialoro氏と大学院生の千代祐太朗が研究交流を行うことによって,例えば非線形の生産項をもつ場合での研究が大きく進捗すると期待している.国内外の研究集会での研究成果発表は,より専門の近い研究者からの意見やモデリングや数値計算を専門とする研究者からの意見など幅広く聞くことができ,今後の研究に新しい方向性を見出すことや新しい課題の発見につながることがあると考えている.また,研究代表者は,2020年を除いて過去7年間,2月または3月に走化性方程式の数学解析に関する国際研究集会を主催している.本年度も継続的に開催して,世界各地の専門家を集め,それぞれの研究成果発表とそれらに対する研究討論を通じて,本研究課題の推進を図る.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により,国際会議「Equadiff 15」(チェコ)が2021年度から2022年度へ延期となったことが理由である.次年度使用額は2022年度に延期となった国際会議「Equadiff 15」(2022年7月・チェコ)における研究成果発表のための外国旅費として使用する計画である.
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Research Products
(13 results)