2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K03279
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
石田 敦英 東京理科大学, 教養教育研究院葛飾キャンパス教養部, 准教授 (30706817)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 調和振動子 / 波動作用素 / リパルシヴ / 伝播評価 / ムール理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
・$c>0$とするとき$-\Delta+c|x|^2$を調和振動子といい、よく知られた基本的な量子力学のモデルである。調和振動子の下では粒子は束縛状態を形成し、空間遠方に散乱することはない。一方$c$の前の符号を反転させて$-c$としたものをリパルシヴといいい、この場合、粒子は時間に関して指数増大のオーダーで空間遠方に散乱する。相互作用を表すポテンシャル関数$V=V(x)$を加えた全ハミルトニアン$-\Delta-c|x|^2+V$の支配する量子力学系において、粒子の散乱を示唆する波動作用素が存在するためのポテンシャル関数の空間減衰の必要条件は、2016年に研究代表者によって解明された。一方、$0<\alpha<2$に対して$-c|x|^\alpha$へと取り替えたものを劣2次の調和振動子という。この場合に波動作用素が存在するための十分条件は知られていたが、必要条件は知られていなかった。本年度、愛媛大学理工学研究科の川本昌紀氏との共同研究によって、この必要条件を与えそれを証明することができた。より具体的には、ポテンシャル関数のある条件の下での波動作用素の非存在を証明した。その証明手法も、ムール理論と随伴作用素に対する伝播評価を用いたこれまでにない新しいものである。論文はすでにプレプリントサーバarXivにて公開している。本研究成果は、代表者が2022年度に採択され2022年12月に実施した京都大学数理解析研究所RIMS共同研究グループ型A「スペクトル・散乱理論とその周辺」において、共著者の川本氏によって発表がなされた。 ・上述の調和振動子$-\Delta+c|x|^2$の定数$C$を時間に依存しているもの$c=c(t)$とした場合の波動作用素が存在する必要条件の研究についても、川本氏との2022年の共同研究によって2篇論文を出版したが、2篇目の論文について2022年日本数学会秋季総合分科会函数解析学分科会の一般講演にて発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、劣2次の調和振動子にある条件下のポテンシャル関数を加えた場合の波動作用素の非存在を、これまでにない新しい証明方法によって証明することができた。よっておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
時間減衰する調和振動子に対して、波動作用素を用いて定義される散乱作用素からポテンシャル関数の情報を抜き出し、その一意性を議論する逆問題の研究が進行している。今年度中には論文としてまとめ上げ、いずれかの国際誌に投稿を済ませる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で2021年度は当該科研費は一切使用できなかったが、2022年度後半からコロナ前の状況を取り戻しつつある中で、国内出張を中心に精力的に研究活動を行なった。結果としては当初予定額の3分2程度の使用にとどまった。2023年度使用予定額と合わせて、国内外の研究発表を中心に予算を使用していく。
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