2023 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative research on stochastic processes in random media
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21K03286
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
福島 竜輝 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60527886)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ランダムウォーク / ランダム媒質 / 高分子模型 / 局在 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず,Mott variable range hoppingと呼ばれるランダム媒質中のランダムウォークについて研究を行った.これは空間中にランダムに配置された点の上を,距離に依存する飛躍率で移動するランダムウォークであり,Anderson局在が起こっている状況での電子の稀な飛躍を記述する平均場模型と考えられている.前年度までに,飛躍率が距離について指数的に減衰する場合に拡散・劣拡散の相転移が起きることを示し,後者の場合のスケール極限を決定していた.本年度は飛躍率が優指数的に減衰する場合に,より特異なスケール極限が現れることを示すことに成功した.具体的には,ランダムウォークのいわゆる最大値過程と最小値過程がそれぞれ独立な極値過程に収束することと,その間での挙動は異なる時間スケールに支配されていることを明らかにした.
この他に,ランダム媒質中の向きづけられた高分子模型について,Stefan Junk氏が得ていた「媒質の影響が強い相」のモーメントによる特徴づけを,有界な媒質の分布から非有界なものに拡張する研究も行った.一般の非有界な媒質にまで結果を拡張することはできなかったが,正規分布やPoisson分布などの標準的な確率分布は全て含むような家庭のもとで,先行研究と同じ判定条件を示すことができた.この研究は,有界な媒質の場合に上述のモーメントによる判定条件を使って得られた,確率熱方程式の解の漸近挙動の研究や高分子模型に対する局所極限定理の,非有界な媒質への拡張の第一歩となる意味でも重要な結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mott variable range hoppingに関する研究については,スケール極限を標準的に考えうる全ての場合に決定することができたので,この方向は予定以上に研究が進展し,ひと段落したと考えている.ランダム媒質中の向きづけられた高分子模型の「媒質の影響が強い相」のモーメントによる特徴づけも,研究開始当初には無かった問題意識であるが,着想を得てからは順調に研究が進んだ.一方で前年度から懸案になっている「ランダムに荷電した高分子模型」の研究については,共同研究者のFrank den Hollander氏を招聘するなどして議論を進めたものの,いまだに問題の新たな難しさを認識したという段階に留まっている.これらを総合して,全体としては予想外の進展も含めれば順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は補助事業期間延長の制度を利用しての研究である.5月20日から24日にドイツのミュンヘンで開催されるランダム媒質中のランダムウォークに関する研究集会に招待されており,その旅費として延長が認められた経費を利用する.この研究集会には関連分野の多くの研究者が参加する予定であり,これまでに直接的な成果が得られていない「ランダム媒質中の拡散過程の大偏差原理と線形応答の関連」と「ランダムに荷電した高分子模型」の研究に関して意見交換をすることで,部分的にでも進展を得られると期待している.
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Causes of Carryover |
2023年度に組織委員を務めた国際研究集会「大規模相互作用系の確率解析」における招待講演者の旅費に充てる予定だった予算について,想定以上に先方負担での参加を希望する講演者が多かったために,残額が生じた.これは先方においても,新型コロナ感染症の影響で国際研究集会への参加が減り,研究費に余裕があったためと聞いている. 次年度使用額については,上記研究集会の招待研究者の一人がミュンヘンで2024年5月に開催する国際研究集会に,本科研費の研究代表者が参加するとともに共同研究を進めるという,当初とほぼ同じ目的のために使用する予定である.
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