2023 Fiscal Year Research-status Report
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21K03288
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
渡邉 恵一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (50210894)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ジャイロベクトル空間 / 関数解析 / 作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
実ヒルベルト空間の原点を中心とする開球は,メビウスの和とメビウスのスカラー倍によってジャイロベクトル空間の構造をもつ。この空間においては,有限生成のジャイロベクトル部分空間は同じ元で生成される線形部分空間と開球の共通部分に一致すること,位相的に相対閉なジャイロベクトル部分空間の閉線形包に関する直交分解を補正すると直交ジャイロ分解が一意的に得られること,任意の元がUngarの距離で収束する直交ジャイロ展開をもつこと,ジャイロ展開係数を求める具体的な手続き等々が知られていて,これはヒルベルト空間の正規直交基底に関するフーリエ式直交展開のジャイロ理論における対応物となっている。これをさらにおし進めて,2元それぞれの直交ジャイロ展開係数によるUngarの距離の評価について解明する。また,2乗総和可能な数列が,ヒルベルト空間上の有界線形汎関数に対応するメビウスジャイロベクトル空間上の(線形と限らない)汎関数の最も基本的なクラスを誘導するという,Rieszの定理の対応物が知られている。この方法をおし進め,土台のヒルベルト空間の正規直交基底の組とそれらの間の有界線形作用素の表現行列を用いて,メビウスジャイロベクトル空間の間のquasi gyrolinearとよばれるジャイロ線形性に準じた性質をもつ写像が自然に誘導され,このクラスの写像について,ヒルベルト空間の間の有界線形作用素論の対応物を建設することが当面の目的のひとつである。その最も基本的な事項として,ヒルベルト空間の間の縮小線形作用素の制限のメビウスの演算と距離に関するLipschitz連続性が2021年度までに解明されている。一方,スカラー体を複素数体とした場合の対応事項も重要な問題であるが,2023年度は2022年度に引き続き,これについて考察を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度末の時点では,スカラー体を複素数体とした場合,研究実績の概要に記載したような事項についての考察が満足できるほど充分には解明できていないため「やや遅れている」が相当であると思われたが,2023年度の研究で,複素ヒルベルト空間の開球に導入されるメビウス型の演算でUngarによるEinsteinの演算と自然に対応するものを明確な数式で表現することができ,今後の研究の進展につながることが期待できるので「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
スカラー体を複素数体とした場合の対応事項について,未解明の事項を明らかにし,また,交付申請書に記載した「研究の目的」,「研究実施計画」のうち,ヒルベルト空間の正規直交基底に関するフーリエ式直交展開のジャイロ理論における対応物として2元それぞれの直交ジャイロ展開係数によるUngarの距離の評価について考察を進め充分な解明を目指す。
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Causes of Carryover |
物品費として文献の購入が予定より少なかった。翌年度分として請求した助成金と合わせて文献を購入する計画である。
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Research Products
(3 results)