2022 Fiscal Year Research-status Report
Construction of the explicit theory of the Abelian functions based on the multivariable sigma functions
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21K03296
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
綾野 孝則 大阪公立大学, 数学研究所, 特別研究員 (50726213)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アーベル関数 / シグマ関数 / 楕円関数 / 代数曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 平面テレスコピック曲線に付随するシグマ関数のべき級数展開はフルビッツ整という良い性質を持つことが知られている。昨年度、この結果を一般のテレスコピック曲線に拡張した。本年度はこの内容を論文にまとめ、arXivに掲載し、数学の専門誌に投稿した。テレスコピック曲線のシグマ関数のべき級数展開の係数は代数曲線の定義方程式の係数の有理数係数の多項式になる。上記の結果は、この結果の精密化と見なせる。シグマ関数のこの代数的性質により、曲線の定義方程式の係数の連続的な変形により曲線を退化させたとき、シグマ関数は極限を持つ。これは可積分系などの分野で重要になる。
(2) 種数2の超楕円積分の逆問題の解を与える2つの2変数有理型関数が知られている。これらの関数は複素2次元空間全体では一致しないが、シグマ関数の零点集合上では一致する。多変数複素関数の一般論より、これらの関数の差はシグマ関数と有理型関数の積に分解できると期待される。昨年度、この分解を明示的に記述した。本年度はこの内容に関する論文を執筆し、現在校正を行っている。
(3) 本年度は、種数3の超楕円曲線から楕円曲線への次数2の射が存在するとき、種数3の超楕円関数を種数2の超楕円関数と楕円関数で明示的に表示した。この内容の論文を現在準備中である。超楕円関数はKdV方程式などの数理物理の基礎方程式を満たすことが知られている。種数2以上の超楕円関数については、楕円関数ほど多くのことは分かっていない。超楕円関数を楕円関数で表示できれば、超楕円関数の具体的な数値をMathematicaやMapleなどを用いて計算することが可能となる。これは数理物理などで重要になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種数の高いアーベル関数をより種数の低いアーベル関数で表示することが本研究の目的の一つである。昨年度は、最も基本的な場合である種数2の超楕円曲線から楕円曲線への次数2の射が存在する場合において、この問題を解決し、査読付きの雑誌に論文を発表した。また、本年度は、種数3の超楕円曲線から楕円曲線への次数2の射が存在するときにこの問題を解決し、現在論文を準備している。また、平面テレスコピック曲線のシグマ関数のべき級数展開のフルビッツ整性に関する結果の一般のテレスコピック曲線への一般化についても論文を投稿した。また、種数2の超楕円積分の逆問題の解を与える2つの2変数有理型関数の差をシグマ関数と有理型関数の積に明示的に分解するという問題を解決し、論文を執筆している。このようなことから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 位数2の自己同型が存在するような種数gの超楕円曲線の定義方程式の標準形が知られている。この条件の下で、種数gの超楕円関数をより種数の低い超楕円関数で表示する。また、楕円曲線への次数3の射が存在する種数2の超楕円曲線の定義方程式の標準形が知られている。この条件の下で、種数2の超楕円関数をワイエルシュトラスの楕円関数で表示する。
(2) 本研究では、種数2,3の超楕円曲線に対して、複素空間全体ではなく、シグマ関数の零点集合上で周期的になる有理型関数で解が書ける可積分方程式を導出した。これは、KdV方程式を2つのパラメータで変形した偏微分方程式になっている。種数gの超楕円曲線のシグマ関数の零点集合は、アーベル・ヤコビ写像によるg-1個の点の像と一致する。今後は、この結果を拡張し、kをgより小さい自然数とするとき、種数gの超楕円曲線に対して、アーベル・ヤコビ写像によるk個の点の像の上で周期的になる有理型関数で解が書ける可積分方程式を導出する。これは KdV方程式を2g-2k個のパラメータで変形した偏微分方程式になると考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス等の影響で、出張が困難になったため。翌年度分の助成金は、日本数学会の出張費として使用する。また、数式処理ソフト、数学の専門書の購入費としても使用する。
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