2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03308
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 政尋 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30587895)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シース / Debye 長 / Vlasov--Poisson 方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工的につくられるプラズマは, 核融合, 半導体デバイス用シリコンウェハーの微細加工, 空気清浄・浄水, 殺菌などに広く利用されている. こうした用 途では,プラズマが金属やシリコンなどに接触する周囲に境界層が現れるため, その解析はプラズマ物理学・工学において重要とされている. 本研究では, プ ラズマ境界層に関する数学理論の構築を目指す. プラズマの運動を記述する数理モデルとして, 流体力学的モデルである Euler--Poisson 方程式(EP 方程式) や, 気体分子運動論的モデルである Vlasov--Poisson 方程式(VP 方程式)などが頻繁に用いられる. これらの方程式に対して物理的に妥当な初期値境界値問題を定式化し, それらの解の挙動を解析することにより, 境界層が形成されるために必要な条件, 境界層の厚みなどを解明する. プラズマ境界層(シース)が形成される際, その厚みは Debye 長の数倍程度になることが知られている. 本年度は, VP 方程式によるシースの厚みの解析に注力した. まず, Debye 長が小さい場合に, 1次元半空間において, VP方程式の時間局所解は外部解 と内部解の和によって近似できると予想した. ここで, 外部解とは, VP 方程式で Debye 長を零とした極限方程式の解である. 内部解とは, 空間スケールを Debye 長に取り直した VP 方程式において, Debye 長を零とした境界層方程式の解であり, 境界層の発展過程を表現する. この内部解の挙動から, シースの厚みが分かる. この予想が正しそうであることを数値解析を用いて確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,次の3つを主な研究課題としていた. 【研究1】 EP 方程式によるシースの厚みの解析 【研究2】 VP 方程式によるBohm条件の検証 【研究3】 VP 方程式によるシースの厚みの解析 昨年度は, 【研究2】を解決した. 本年度は, 【研究3】に注力した. Debye 長が小さい場合に, 1次元半空間において, VP方程式の時間局所解は外部解と内部解の和によって近似できると予想し, この予想が正しそうであることを数値シミュレーションにより確認することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は, 【研究3】 VP 方程式によるシースの厚みの解析を注力する. Debye 長が小さい場合に, 1次元半空間において, VP方程式の時間局所解は外部解と内部解の和によって近似できることを証明する. その際, 本年度得られた数値シミュレーションによる結果を足掛かりとする. なお, 本研究は, C. Jung 教授 (蔚山科学技術大), B. Kwon 准教授 (蔚山科学技術大), 高山正宏助教 (慶應大) との共同で推進する.
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Causes of Carryover |
共同研究者との対面打ち合わせのために旅費を計上していたが, コロナ禍のため, これを使用できなく繰越金が生じた. この繰越金は, 次年度の打ち合わせ旅費に充てる.
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