2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of vector fields and development of convex analysis on complete geodesic spaces
Project/Area Number |
21K03316
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
木村 泰紀 東邦大学, 理学部, 教授 (20313447)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 健治 玉川大学, 工学部, 教授 (70307164)
高阪 史明 東海大学, 理学部, 教授 (20434003)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 測地距離空間 / 凸最小化問題 / 均衡問題 / リゾルベント作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年急速に発展が進んでいる完備測地距離空間上の凸解析学の理論を、ベクトル場の概念を用いて再構成することである。2023年度も、昨年度に引き続き、ベクトル場の研究に関連するいくつかの成果が得られた。具体的には、ベクトル場に相当するものとして共役空間をもつバナッハ空間に対して、研究対象である完備測地距離空間との類似性に関する新しい知見が得られた。また、凸解析学における問題の一つである均衡問題をより一般的な設定のもとで定式化し、その解法に必要な作用素の定義の妥当性について論じた結果も得られている。 完備測地距離空間の一つであるアダマール空間やより一般的なCAT(κ)空間は、いわゆる平行四辺形公式、あるいはスチュワートの定理と呼ばれる式から派生した不等式をみたすことが知られている。一方で、バナッハ空間では然るべき仮定のもとで、平行四辺形公式に類似した不等式が成り立つことが知られている。昨年度から続く研究の成果の一つとして、これらの不等式を工夫された同値な形に変形することで共通の性質を見出すことに成功した。これによって、従来別々に研究されていたバナッハ空間とCAT(κ)空間の幾何学的性質を、共通の手法で解析できる手がかりを得た。 また、完備測地距離空間上の凸解析学の理論において重要な位置を占める問題として均衡問題を取り上げ、その鍵となる概念であるリゾルベント作用素については、妥当な定義のための摂動関数の条件について詳細に調査し、妥当性の十分条件を得た。これらの条件については摂動関数の性質のみならず、空間の曲率上限の符号によっても性質が異なることが判明しており、本研究の今年度の成果として、負の曲率上限をもつ空間に対する条件の精査をし、重要な結果を得ることができた。 これらの結果の一部は既に研究論文として公開しており、他の部分についても、部分的に口頭発表などをおこなっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果を引き継ぎ、2023年度についても測地距離空間におけるベクトル場と凸解析の諸問題についての研究を実施した。空間の曲率上限によって定まる、測地線が有する幾何学的性質に対応して、問題解析に重要な役割を果たすリゾルベント作用素の定義や性質が異なるが、類似性についての知見もある程度得られたため、空間の曲率上限の符号に依存しない統合的な証明法の考察などが進んだ。 十分によい性質を持ったベクトル場の定義を得るためにはいくつかの課題が残されているが、昨年度と今年度に成果が得られた中線定理から派生する不等式について、曲率上限をパラメタとする重要な知見を得ることができ、これについては満足する進展が得られたと考えている。 研究打ち合わせや研究成果発表については、コロナ禍の影響もほぼなく、2022年度末頃から徐々に以前の状況に戻りつつある海外での研究成果発表の機会が増加している。研究の進捗状況は総じて良好な状況であると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点では、当初の想定とは方向性が若干異なるものの、全体としては研究が順調な進捗をしており、具体的なベクトル場の定義とその性質解明をするという目的達成へ向けて順調に進むことが期待できる状況であると考える。中線定理から派生する不等式に関連する新たな知見は今後の研究での活用が大いに期待できる成果である。 均衡問題に代表される非線形問題の解近似理論もさまざまな新しい近似法が提案され、作用素の定義の妥当性も含め、数多くの成果が得られている。これらの計算機実験等を通して、実用的な成果に繋げることも重要であると認識している。 研究打ち合わせや成果発表については、対面での実施が実現しており、今年度と同様に今後もより活発になっていくことが期待される。
|
Causes of Carryover |
(理由) 日程等の折り合いがつかず、一部の国際会議への参加が見送りとなったため。 (使用計画) 研究成果発表のための国際会議への参加について、会議の選定や日程の調整時期等を再検討し、計画にあわせた使用に努める。調整が困難な場合には、状況に応じて遠隔会議での研究成果発表や、無理せず次年度以降での使用を検討する。
|