2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on variational level set method for evolution of spirals by crystalline curvature flow
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21K03319
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大塚 岳 群馬大学, 情報学部, 准教授 (00396847)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | クリスタライン曲率流方程式 / 非局所特異拡散方程式 / 粘性解 / 等高線法 / スパイラル成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
数学解析の研究では、有界区間上定義された関数のグラフがクリスタライン曲率にしたがって時間発展する発展方程式に、境界にてグラフの傾きを定める接触角条件を与えた境界値問題について考察した。これについて、粘性解理論に基づく弱解の比較原理および大域解の存在について考察し、その過程で解がみたすべき境界条件について検討を行った。 クリスタライン曲率は多角形型曲線の辺の長さを用いて定める曲率であるが、これを境界値問題で考察すると、領域の境界に接触している辺の長さをどのように定めるかが問題となる。候補としては、境界に接触した辺について、(1)境界の外に無限の長さの辺が続く、(2)境界で線対象となっているものとみなす、(3)境界の接点から頂点までの部分のみを辺とする、の3つの候補があり、将来考えるスパイラル成長問題の観点およびその数値計算実験から、(3)に基づいて弱解の定義を構成すべきであるとの結論に至った。比較原理や弱解の存在などの解析については現在進行中である。 変分型等高線法の研究については、本年度までに行った数値解析の結果について再検討を行い、論文にまとめる作業を行った。その過程で、常微分方程式系による離散モデルと変分型等高線法によるそれぞれの解の違いについて、2019年の拙著論文に基づき、2本の曲線で挟まれた領域の面積を計算する面積差の方法から評価を行った。離散モデルと変分型等高線法では、とくに渦巻の中心付近での運動法則が異なるため、その分が面積差に現れるであろうと考えていたが、数値計算実験における空間格子点を細分化することで、数値計算実験の範囲では面積差が減少するという数値計算の結果を得た。加えて、バンチング現象の例である幻視スパイラル・幻視ループの数値計算実験について、2019年度に行った口頭発表の内容の再検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目論見として、数学解析ではクリスタライン曲率流による通常の等高線の時間発展問題についての考察を行い、その成果に基づいてスパイラル成長の等高線方程式の考察を行うことを目標としていたが、その前段階としてグラフの時間発展問題の考察を行う必要があり、本年度の研究ではこれを完了することができなかった。したがって残念ながら、本研究の進行は遅れていると言わざるを得ない。 研究が遅れた理由は、並行して行っていた変分型等高線法の数値解析結果を論文にまとめる作業に手間取り、結果として両者とも集中して研究を進めることができなかったことが挙げられる。また、精査を行っていた先行研究の論文について、その内容と量についての見通しを過小評価していたと反省している。 他方で、数値解析の研究については現段階での成果をかなりまとめることができて、論文として発表する準備がかなり進展した。また、境界条件の定め方などについて方針を定めることができた他、バンチング現象の研究について、少し先取りして着想を得ることができ、次年度以降の研究を進めることができると考えている。 以上の評価と理由から、本研究の進捗は「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
粘性解理論による数学解析の研究を集中して行い、まずは有界区間上でクリスタライン曲率流と境界での接触角条件のもと時間発展する関数のグラフの問題における解の比較原理および時間大域解の存在についての研究を行う。そしてこれの結果を、有界領域における等高線方程式での境界値問題、およびスパイラル成長問題へ拡張することを目指す。他方で、変分的等高線法やその前身である平均曲率流方程式およびクリスタライン曲率流方程式の集合論的アプローチについて資料収集を行い、粘性解理論との特徴づけに関する研究の準備を行う。 変分的等高線法の弱解理論については、これまでの研究において最適化運動アプローチによる界面列が時間変数について離散化した近似解になっているものと思われるので、まずはこれの時間幅を0に近づけることによる極限が存在することの証明を軸にして研究を進める。他方で、クリスタラインエネルギーの劣微分作用素を用いて定義される、変分的なアプローチの弱解についての検討を行い、最適化運動アプローチの極限がその意味での弱解になっているかなどについて研究を進める。 数値解析の研究については、現在執筆中の論文を完成させるとともに、変分的等高線法を用いた、バンチング現象を許す数理モデルの構築について検討を行う。適正粘性解理論に基づいて界面の垂直方向に強力な特異拡散をかける方法の数値解法を、あるエネルギー汎関数の最適化運動アプローチとして定式化する視点から検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で国内外の研究集会のいくつかがハイブリッド開催になるなどしたため、出張や海外渡航を慎重に判断した。また、2023年度に早稲田大学で開催される国際研究集会のICIAM2023においてミニシンポジウムを企画したため、これに参加するための費用、または必要に応じて講演者を招聘するための費用を確保するため、2022年度の科研費の使用を慎重に判断した。 次年度の使用計画としては上述の研究集会への参加費用および出張旅費、日本数学会その他の研究集会へ参加や国内外の研究者との意見交換のための出張費用、論文原稿の英文校正費用等に使用する。
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