2022 Fiscal Year Research-status Report
非圧縮性流体方程式の解の性質に関する調和解析学の応用
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21K03323
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
谷内 靖 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (80332675)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 非線形偏微分方程式 / Navier‐Stokes方程式 / 流体方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度も水や油などの粘性のある縮まない流体(非圧縮性粘性流体)の運動を記述する非圧縮性Navier‐Stokes方程式の解の一意性に関して、関数解析学的手法および調和解析的手法を用いて研究を行った。ここで、非圧縮性Navier‐Stokes方程式とは、流体の速度場u(x,t)と圧力場p(x,t)を未知関数とする連立の非 線型偏微分方程式系である。具体的には、外部領域などの非有界領域における非圧縮性Navier‐Stokes方程式の定常解や時間周期解、時間概周期的な解(almost periodic‐in‐time solution)のような時刻マイナス無限大から続く解の一意性に関して研究を行なった。私は、数年前に、時間周期解のようなprecompactな値域を持つ解に関して、外力が十分小さい場合は、解のクラスに小ささを仮定しなくても一意性が成り立つことを証明した(正確には同じデータに対し、precompactな値域を持つ2つの解が存在したと仮定し、一方にのみ小ささを仮定すれば、もう一方の解には小ささを仮定しなくても、両者は一致することを示した。) さらに、令和3年度には値域のprecompact性を仮定しない場合の一意性を考察し、解が空間変数に関して3乗可積分な場合は、小ささを仮定しない方の解のr(r<3)乗可積分性)を仮定すれば、同様の一意性が成り立つことを証明した。 しかし、3乗可積分性の条件は外部領域の場合は非常に強い条件であり、外部問題には適用できない。そこで、令和4年度は、3乗可積分な関数の空間であるL^3の代わりに、L^3よりも真に広い空間である弱L^3空間を用いて、解がこの弱L^3空間に属するという仮定のもとで、同様の一意性定理を証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、時間軸全体で定義されたNavier‐Stokes方程式の解の一意性に関して研究した結果、解の3乗可積分性を取り除くことに成功し、弱L^3空間に属するという仮定に修正できた。 ただし、小ささを仮定しない方の解がr(r<3)乗可積分であることが仮定されているため、今後はこの条件も取り除くことを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところおおむね順調に研究が進んでおり、今後も今までどおり研究を勧める。
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Causes of Carryover |
共同研究や研究集会参加のための出張を計画していたが、コロナ禍の影響で計画通りには出張できなかっため次年度使用額が生じた。計画していた出張を令和5年度に実施する。
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