2022 Fiscal Year Research-status Report
消散構造を持つ非線形偏微分方程式系における安定性理論の構築
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21K03327
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上田 好寛 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (50534856)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 安定性解析 / 非線形問題 / 偏微分方程式論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、気体力学や弾性体力学に起因する微分方程式に関する数学解析を主な目的としており、特に対称双曲型方程式系や双曲ー放物型方程式系など一般の方程式系に関する安定性理論の構築を目指している。その一例となる具体的な物理モデルとして、Euler-Maxwell方程式系・Plate方程式系・Timoshenko方程式系・粘弾性方程式系などを取り上げながら、方程式の持つ消散構造から引き出される安定性現象に着目し、研究を行なっている。特に、より物理背景に着目することで、各項が複雑に影響を及ぼしあうような方程式系を考察する際に現れる「可微分性の損失」とよばれる現象について深く解析を行っており、平衡点周りの非線形安定性解析に関して研究を進めている。 令和4年度は、前年度に行った線形安定性解析の最良性に関する研究を期に非線形問題の安定性解析に取り組んだ。具体的には時間積分で記述される記憶型消散項を考慮したTimoshenko方程式系について解析を進め、摩擦型の消散項に間する既知の結果と同程度の結果を示すことができた。またさらに、非線形を加味した記憶型消散項を持つTimoshenko方程式系についても研究を進めている。 昨年度はこれまでに比べて新型コロナウイルス感染症の影響が少なくなり、対面での研究集会も増えてきた。学会等での研究発表も増えてきており、13回の発表講演を行なった。また、神戸大学での定期的なセミナーも開催しており、これらの場での意見交換・討論を通じて今後の研究の指針を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、本来の計画内容である非線形安定性の解析に取り組むことができた。具体的には非線形Timoshenko方程式系の解析であるが、本物理モデルは非線形双曲型方程式系の本質的な困難さを十分に含んでいると考えられるので、今度の目標である一般の双曲型方程式系に関する非線形安定性理論の構築に有益な知見を得たと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに培ってきた線形微分方程式系の安定性理論を基に様々な非線形物理モデルの解析を進める予定である。またさらに、ここで得られた知見を活かし、一般の双曲型方程式系に関する非線形安定性理論の研究にも着手する。 具体的な考察として、これまでに知られているエントロピー条件の拡張が必要であるため、Euler-Maxwell方程式系などの物理モデルでの解析を参考にその拡張について考察を進める予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度は新型コロナウイルス感染症の影響のため予定していた国内外の出張が中止となり、使用額が予定より少なくなった。令和5年度はこれまでに延期されていた研究出張等を行う予定であり、前年度分の経費を合わせて使用する予定である。
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Research Products
(17 results)