2021 Fiscal Year Research-status Report
Lie 群構造をもつ非線形発展方程式の可解性の解明
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21K03333
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
岡 康之 大同大学, 教養部, 准教授 (70625079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 浩之 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (90748328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | stratified Lie 群 / 非線形熱方程式 / 初期値問題 / 一意存在性 / ソボレフ空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユークリッド空間やハイゼンベルグ群などをより一般にしたstratified Lie 群(以下、SLG)に付随するサブラプラシアンによって構成される非線形熱方程式について調べた。特に、SLG上のソボレフ空間に初期値を持つ解が時間局所的に一意存在するための条件を解明することを目的とした。 SLGはdilationに関して自己同型群であり、また、ヘルマンダー条件を満たすSLG上の左不変ベクトル場から構成されるサブラプラシアンはdilationに対し2次の等質性を保持している。これらの性質により、ユークリッド空間の場合と類似の結果が得られると予想できる。一方で、SLG上で解析を行う際にSLGが内在する非可換性により、フーリエ解析との相性が著しく悪いという難しさがある。 ユークリッド空間上のソボレフ空間における初期値問題の一意存在性についてはRibaudによる先行結果がある。また、SLG上における同様の結果についてはBrunoらの先行結果があり、SLG上のソボレフ空間に有界性を付加した空間において比較的一般の非線形項の条件で一意存在性が示されている。その証明では、algebraの性質が利用されている。本研究では、ベキ型のような非線形項を考えることで、ソボレフ指数が小さいときの初期値に対して有界性の条件を付加せずに一意存在を示せた。 本研究の結果は、Ribaudの結果をSLG上に拡張したものになる。一般に、ソボレフ指数が小さいソボレフ空間はalgebraの性質を持たないため、それに代わる非線形項のソボレフノルムによる良い評価が必要になる。SLG上の解析は前述の通りフーリエ解析との相性が悪いため、本研究では、非線形項の評価を得るためにRibaudが用いたLittlewood-Paley理論ではなく、generalized chain ruleを用いることでその困難を回避した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は、Ribaudの結果のSLGへの拡張として、ハイゼンベルグ群を含む2-stepのSLGへの拡張のみが期待されていた。理由としては、Ribaudの証明で用いられたLittlewood-Paley理論に基づく手法が、現状ではハイゼンベルグ群においてのみ有効であるためである。本研究では、Littlewood-Paley理論とは全く別のgeneralized chain ruleを用いることによって、期待していた以上に高い一般のr-step(r≧1)まで拡張ができたため、ここまでの状況は順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、SLGに付随するサブラプラシアンによって構成される非線形シュレーディンガー方程式について調べる。特に、SLG上のソボレフ空間に初期値を持つ解が時間局所的に一意存在するための条件を解明することを目的とする。SLGに付随するシュレーディンガー方程式に関しては、熱の場合とは違い、線形解に対してさえ明らかでないことが多い。そのため、SLG上の分散評価並びにストリッカーツ評価を得ることから始める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け参加を予定していた学会や研究集会がオンラインで実施されたため、出張の機会が得られなかった。また、共同研究者の平山浩之氏との研究打ち合わせのための出張も同様の理由により予定していた回数よりも減少した。その上、当該年度の研究では、研究当初、Littlewood-Paley理論を用いて研究を進めていたため、3-step以上への拡張に時間を要した。そのため、本研究に関連する成果の発表に伴う出張の機会がほとんど生じなかった。 以上の理由から、予定していたよりも助成金の使用金額が少なくなった。 翌年度は、今年度よりも新型コロナウイルスの感染拡大の状況が好転すれば、成果の発表や打合せの機会が増えることが予想されるため、新たに請求した助成金は主に出張旅費に充てる予定である。また、前年度からの繰越し分については関連する内容についての書籍購入や、毎年本学で開催している研究集会「大同若手微分方程式セミナー」における講演者の招聘費に充てる予定である。
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