2023 Fiscal Year Annual Research Report
和算で扱われた計算幾何学問題に対する記号的消去計算アルゴリズムの現代化の研究
Project/Area Number |
21K03335
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森継 修一 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (50220075)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 計算幾何学 / 数式処理 / 消去計算アルゴリズム / 和算 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来から取り組んできた「円内接多角形問題」の研究を引き続き行った。 1年目は、円内接七角形に対する「面積×半径」公式を数値補間で求める方法を考察した。従来の手法である「終結式による消去計算」では、問題のサイズからみてメモリが不足して実行不可能になることが見通せたので、一種の未定係数法である数値補間による計算を試みた。結果として、n=7の場合の「面積×半径」公式がz=4SR(面積×半径)に関する38次式であることを示し、その全31,590項を確定させることができた。31,590という項数だけの報告は以前になされていたが、アルゴリズムの詳細も含めた成果は、世界初であると考えられる。 2年目は、SvrtanによるNew Brahmagupta公式の利用を考察した。これにより、円内接五角形・六角形に対する面積公式・「面積×半径」公式の計算の効率化が可能になった。さらにこの手法を円内接七角形・八角形にも適用することを試みたが、この工夫によっても、式のサイズが爆発的に大きくなるため、研究を進めることが非常に困難な状況に至った。 3年目は、この研究の端緒となったRobbinsの論文に立ち返り、複素平面上の対称式の利用を考察し、この方法を適用して、n=7 の場合の「面積×半径」公式の計算を試みた。以前の取り組みとは異なり、最初から「辺長の2乗に関する基本対称式表現」を求める手法を採用したことにより式のサイズが抑えられるため、終結式と因数分解を利用したアルゴリズムが適用可能になった。結果として、1年目に成功した数値補間による方法では、CPU時間が約17日必要だったが、今回の工夫により約3時間に短縮された点で、計算の効率化に成功している。最終目標である「円内接八角形に対する『面積×半径』公式の計算」は未完成であるが、そこに至るいくつかの結果が得られたことが3年間を通しての成果である。
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