2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03338
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
酒井 拓史 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (70468239)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 反映原理 / 巨大基数 / 基数算術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は主に以下の3つの研究成果が得られた. (1) Rado 予想の類似の反映原理として,Zhang は σ-Baire 木の反映原理を定式化している.この反映原理は,基数算術に対して Rado 予想と同様の帰結を持つことが知られている.本研究ではこの反映原理の高階バージョンが基数算術にどのような帰結をもたらすかを研究し,2のアレフ0乗やアレフ1乗に上限を与えないことを示した. (2) Munster 大学大学院生の安田泰智氏との共同研究で,Neeman 崩壊によって超コンパクト基数をアレフ2に崩壊したモデルで,どのような反映原理が成り立つかを調査した.このモデルでは,Rado 予想や定常反映原理が成り立たないが,定常反映原理を少し弱めたものが成り立つことを示した.またこの反映原理からはアレフ1上の非定常イデアルがプレシピタスになることも示した. (3) 神戸大学名誉教授の渕野昌とともに高階無限論理のコンパクト性について研究した.基数κに対して,κ未満個の連言と選言を許す高階論理がコンパクトであることは,κが拡張可能基数であることと同値になることが,Magidor によって示されている.本研究では,この高階無限論理で濃度がκ以下の言語のコンパクト性について考察した.特に,弱拡張可能基数という巨大基数を新たに定式化し,このコンパクト性が,κが弱拡張可能基数であることと同値になることを証明した.また,弱拡張可能基数と他の巨大基数の大きさや無矛盾性の強さの比較も行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は,Baire 木の反映原理の高階バージョンについて新たに考察し,新たな反映原理を模索する一つのアプローチを得た.また,Neeman 崩壊はサイドコンディション法を用いた新たな強制法で,このバリエーションで巨大基数を小さな非可算基数に崩壊することで,古典的な Levy 崩壊とは異なる反映原理を成り立たせることが期待される.2022年度の Neeman 崩壊の研究によって,この足がかりが得られた.また高階論理のコンパクト性は反映原理と深く関係し,今後の本研究を進める上で有用な知見が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
σ-Baire 木の反映原理とその高階バージョンについては,定常性反映原理との関係をはじめ,多くの基本的な問題が未解決である.まずはこれを解決する.また,Baire 性以外にも,木や半順序集合の性質は,これまで集合論やグラフ理論で多岐に渡って研究されている.これらの性質の反映原理についても,無矛盾性や相互関係について考察を進める. また,Neeman 崩壊で巨大基数をアレフ2やアレフ3に崩壊したモデルで,どのような反映原理が成り立つかを考察し,新たな興味深い反映原理を発見する.
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Causes of Carryover |
本研究は国内外の研究者と議論しながら進めるもので,経費の大部分を旅費に使用することを予定していた.しかし,2022年度もコロナ禍の影響で,国外の研究集会に参加することができず,次年度使用額が生じた.2023年度は国外の研究集会にも参加できるようになり,7月にシンガポールの研究集会と10月にフランスの研究集会に招待されている.次年度使用額はこれらをはじめとした国内外の旅費に充てる.
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Research Products
(2 results)