2021 Fiscal Year Research-status Report
ベクトル空間Wに生息するAPN関数f:V→Wの研究
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21K03343
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Research Institution | Yamato University |
Principal Investigator |
谷口 浩朗 大和大学, 教育学部, 教授 (60370037)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | APN関数 / Dillon's observation / 有限体上の関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
共通鍵暗号の解読法に対して強い耐性を持つ設計のため非線形性の非常に大きいAlmost Perfect Non-linear (APN) 関数f:V->Wの研究が活発に行われている。その中で筆者はVとWが異なる場合を中心に研究を行っている。2021年度に得られた成果は以下の通りである。(1) f:V->Wに対する「Dillonの観察」と言われる条件が,fがさらに小さい次元のベクトル空間へのAPN関数f:V->W' に帰着できないための必要十分条件であること,を示した。(2)「Dillonの観察」条件を満たす多くのAPN関数f:F_2^n->F_2^{n+1}の無限系列を構成した。このことによりさらに小さい次元のベクトル空間へのAPN関数に帰着することができないAPN関数の無限系列が存在することがわかった。(3)f(0)=0の場合に, 関数fの非線形度がnl(f)>0になるための必要十分条件は,関連するCayleyグラフが連結になることであること,を示した。さらに「Dillonの観察」条件を満たせば、非線形度がnl(f)>0であることを示した。(4)APN関数f:F_2^{n+1}->f_2^{n+1}をn次元部分空間Hに制限したAPN関数f:H->F_2^{n+1}の非線形度nl(f)を,もとのAPN関数f:F_2^{n+1}->f_2^{n+1}の非線形度で評価する評価式を作った。さらにf:F_2^{n+1}->f_2^{n+1}がAlmost Bent(AB)関数の場合に,実際にf:H->F_2^{n+1}の非線形度nl(f)を決定した。(5)「Dillonの観察」条件は,2次的な関数の場合にCCZ同値で保たれることを示した。 以上を専門誌に投稿し現在minor revisionを指示されている(2022.4)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書において、まず「値域が小さい次元のAPN関数に帰着できないAPN関数f:V->Wの(1)無限系列を数多く構成する」ことを上げていたが,不十分ながらもいくつかの無限系列が,有限体FをWと同一視しF上のAPN関数を有限体Fの部分ベクトル空間Vに制限することにより,構成することに成功した。この方向はさらに追求していく必要がある。 (2)VがWの部分空間であるとき「APN関数のCCZ同値性とCayleyグラフの同型性が同値であること」の証明に成功した。 (3)関数の非線形度とCayleyグラフの連結性の関係が証明できた。 (4)「APN関数fがWに本質的に生息する(小さい次元へのAPN関数に帰着されない)」条件とDillonの観察「{f(x+y+z)+f(x)+f(y)+f(z)| x,y,z\in V}=W」条件が同値であることが証明できた。。 (5)Dillonの観察「{f(x+y+z)+f(x)+f(y)+f(z)| x,y,x\in V}=W」条件は,2次的な関数に関してはCCZ同値で保たれることを証明した。現在、2次的でない関数の場合もCCZ同値で保たれることを証明しようと試みている。 以上の理由により,1年目の研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)有限体FをWと同一視しF上のAPN関数を有限体Fの部分ベクトル空間Vに制限することにより,「Wに本質的に生息する(小さい次元へのAPN関数に帰着されない)」APN関数の無限系列を構成することを引き続き試みていく。 (2)APN関数fが「Wに本質的に生息する(小さい次元へのAPN関数に帰着されない)」条件を満たすとき,fからDiferentially 4-uniform(微分4一様)関数が構成出来ることが証明できる(2021年度の成果の一つである)が,逆に微分4一様条件を満たす関数からAPN関数f:V->Wを構成することを試みる。(これはDillon-Edelのswichingの方法によるAPN関数の構成の拡張に似ている。) (3)Dillonの観察「{f(x+y+z)+f(x)+f(y)+f(z)| x,y,z\in V}=W」条件は、2次的でない関数の場合もCCZ同値で保たれることを証明しようと試みる。これはAPN関数に関するいくつかの未解決問題に関係しており,完全には証明できないまでも,本年度は出来るところまで迫りたい。
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Causes of Carryover |
計算ソフトMagmaと計算ソフト専用ワークステーション購入で直接経費のほぼ全額を使用した。端数の200円は次年度の物品費および旅費として使用する。
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