2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03348
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 野人 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30210545)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 精度保証付き数値計算 / 力学系 / 微分方程式 / 構造保存型数値解法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度が最終年度であった科研費課題について、コロナ禍の影響で予算執行が遅れたため、交付期間を1年延長した。その関係で、本課題の交付金からは研究費を支出していない。 本年度の研究は、保存系の数値計算法に関与する精度保証法に関する基礎的な研究をスタートさせた。 まず、複素力学系のうち右辺が複素関数として正則なものを考える。これは連続分布する周期解を持つことが知られている系であり、単純ながら数値計算は極めて厳しい結果を与える。通常の4段4次ルンゲ・クッタ法では周期解を捉えることができないのである。その理由は、保存量をもつ系のために軌道ドリフトが起こりやすく、微細な誤差で計算が破綻してしまうことにある。これを回避するには高精度解法を用いるか、構造保存型解法と呼ばれる保存系に適した数値解法を用いるかが通常の対応となる。 我々は、構造保存型解法の開発ツールとしての精度保証法の構築を研究目的の一つとしているので、まずはこの問題に対する精度保証法を考案した。これは、常微分方程式の精度保証法であるLohner法に対し、保存量の情報を取り込みつつ計算を進める手法を組み合わせる、というものである。結果としては、4次精度の計算法ではやはり誤差拡大が起こるものの、解軌道のドリフトは極小さく抑えられることがわかった。このことは2022年3月にzoomで行われた日本応用数理学会研究部会連合発表会において報告した。 さらに2022年3月の国際会議 ReCap2022においてはこの手法が議論され、微分代数方程式への適用の可能性があることがわかった。現在、この方向に研究を進めるとともに、4次元以上のHamilton系に適用する場合の方策を検討しつつ、構造保存型解法との接点を探っている。また、これについては構造保存型解法の専門家の協力を取り付けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究そのものは順調に進み、新しい進展の方向も見えている。しかしながら、前述の通り予算執行にあたっては前年度までの科研費課題の交付金を利用したために、今年度の本課題からの支出がなされなかった。このことを持って「遅ている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については、研究の促進のために研究員を雇用する。その費用に今年度からの繰越金を充て、予算執行の状態を通常の形に戻す予定である。研究内容については概ね順調なので、特に計画の変更はない。
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Causes of Carryover |
前述のように、前年度終了予定の科研費課題を延長した影響で、今年度に関しては本課題の交付金を執行していない。 次年度については、研究の促進のために研究員を雇用する。その費用に今年度からの繰越金を充て、予算執行の状態を通常の形に戻す予定である。研究内容については概ね順調なので、特に計画の変更はない。 なお、本年度の研究実績については、前年度までの科研費課題の交付金による研究実績とは別のものを記述していることに留意されたい。
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