2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03348
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 野人 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30210545)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 精度保証 / 力学系 / 保存量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、保存量を持つ常微分方程式系に関して、主として2つの観点からの研究を進めた。 一つは簡易的な構造保存型とも言える射影法をベースとした手法である。保存量を伴う系の数値計算は、軌道計算におけるドリフトが生じやすいことが知られている。精度保証付き数値計算では、このことは区間幅の急激な拡大を引き起こす。通常の数値計算では、これを避けるために構造保存型数値計算をはじめとするいくつかの手法が存在する。射影法はそのうちでも簡便なもので、保存量を与える関数の勾配を計算し、これを次ステップの解計算に援用する。これを精度保証法として展開すると、Lohner法の計算プロセスの中で計算される区間を保存量の勾配に合わせて回転し、特定の方向を細分割して保持している保存量を含まない小区間を排除する方法を採ることになる。この観点から、ドリフトが起こりやすい例題を用いて研究を進め、排除の方法に関するいくつかの知見を得た。さらにこの方法を微分代数方程式に適用し、限定された状況ながら精度保証付き計算を行うことに成功している。微分代数方程式への精度保証法の適用は、申請者の知る限り最初のものである。 二つめは、位相空間における平衡点近傍の球面上で保存量をサーチすることで、解の挙動を解析する方法の研究である。球面上での保存量の最大値・最小値は、解軌道がその点で球面に接していることを意味している。さらに微分方程式右辺のベクトル値関数(flow)からの情報を組み合わせると、当該の解軌道が球内に閉じ込めれられている、もしくは、球内に入り込むことがないことを示し得る場合がある。このような情報を数値的手法として整えて提案し、非線形シュレディンガー方程式の解析に応用した例を示した。この方法は学術雑誌の招待論文として投稿し、掲載されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現象解析の手法として、新しいものを開発しつつあり、その進展が見込まれる。特に、微分代数方程式への適用は、当初計画で予想していなかった成果であり、意義が大きい。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、微分代数方程式の精度保証法に関して、標準的なレベルでの数値実験を行い、論文としてまとめる。また、簡易構造保存にあたる精度保証計算については、既存のLohner法プログラムのなかにこれを組み入れる形で実装を行い、その有効性を確認していく。 球面上の保存量計算を利用した解析手法については、特に高次元の問題への適用を試みたい。3次元以上では平衡点近傍であってもカオス的挙動が生じる場合があるが、このようなケースでも解軌道の閉じ込め領域を検証できる手法を確立する。
|
Causes of Carryover |
次年度に大きな国際研究集会(ICIAM2023)や海外出張を控えているので、今年度は物品の購入を抑制した。そのため次年度使用額が発生した。
|