2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K03361
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
豊永 憲治 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80390532)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 固有値 / グラフ / ステガノグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、代数的な行列の固有方程式の解である固有値と、幾何的なグラフ構造の間の関連性について研究を行い、幾何学的な構造から代数的な固有値の計算に対する新しい知見を導くことを目的としている。また、グラフスペクトル理論を情報工学分野への応用を模索することを目的としている。従来の精度保証付きによる固有値計算では、扱うシステムが多重固有値をもつ場合は、扱う行列が非正則になり、固有値の多重度が大きい場合、従来の不動点定理などを使った方法では、コンピュータを使っても狭い区間の中に固有値の存在を保証できない場合が存在した。 一般に、行列のサイズが大きくなり、固有値の多重度が増すと、固有値を包み込む区間の幅は次第に大きくなっていくが、グラフスペクトル理論における視点を用い、グラフの特別な頂点を除くことで、行列のサイズを小さくし、複数の連結成分に分割することで、多重度が大きい固有値に対しても、精度よく固有値の包み込みができる例が存在することが一般のグラフについても確認できた。ある頂点を除いたときに、そのグラフに対応する行列において、着目している固有値の多重度が1つ上がる頂点Parter vertexを除くことで、多重固有値を包み込める場合が存在することがわかった。しかし、精度保証付き数値計算の実行速度の面からみると、他の手法と比べてみると、非常に遅いという問題点があることがわかったため、この方法を進展させるには、計算過程の効率化が今後の課題となることがわかった。 もう一つの課題であるグラフスペクトル理論の応用として、グラフを使ったステガノグラフィへの応用を試みた。情報をある媒体に埋め込んで通信する手法をステガノグラフィというが、グラフ構造に含まれる辺を追加・削除することで、鍵となる複数の区間に含まれる固有値の数の偶奇を操作し、それによりビット値を変化させて情報を送る手法を新しく考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実対称行列の多重度が大きい固有値に対して精度保証付き数値計算を試みた。ある頂点を除いたときに、そのグラフに対応する行列において、着目している固有値の多重度が1つ上がる頂点Parter vertexを除くことで、多重固有値を包み込める場合が存在することが確認できた。しかし、精度保証付き数値計算の実行速度の面からみると、他の手法と比べ実行速度が遅いという問題点があることがわかった。また、グラフスペクトル理論の情報工学分野への応用として、ステガノグラフィへの応用を試みた。秘密にしたい情報をある媒体に埋め込んで通信する方法をステガノグラフィというが、ネットワーク構造をもつ対象の一部のグラフに情報を埋め込むグラフステガノグラフィにおいて、グラフスペクトルを用いた新しい方法を提案した。具体的には、グラフの辺を追加または削除することで、グラフの隣接行列の固有値を操作し、複数の区間に入る固有値の数の偶奇を操作することで、0, 1ビットを埋め込み情報通信するグラフステガノグラフィの新しい方法を考案した。 その結果は、日本応用数理学会およびRCC・ISEC・IT・WBS合同研究会で発表を行った。 グラフスペクトルの関連論文として次の論文が採択された. 1. Parter Vertices and Generalization of the Downer Branch Mechanism in the General Setting (linear and Multilinear Algebra, K.Toyonaga, Charles R.Johnson) 2. The effect of removing a 2-downer edge or a cut 2-downer edge triangle for an eigenvalue(Special Matrices, K.Toyonaga)
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の数値結果から、グラフスペクトル理論を用いた多重固有値の数値計算の精度保証付き数値計算は可能である場合があるが、実行速度が遅いことがわかったので、実行速度の改良ができるか、今後検討を行いたい。 また、代数的な行列の固有方程式の解である固有値と、幾何的なグラフ構造の間の関連性について研究し、多重固有値をもつグラフの幾何学的な特徴をさらに明らかにしていくことを今後の目的とする。特に、これまでの研究では特定の固有値の多重度に関するグラフの性質を研究してきているが、複数の固有値に共通する固有値の多重度とグラフの関連性について研究することを今後の課題の1つとする。 この分野の海外の研究者とは昨年度までは、コロナ禍のため直接交流することは難しかったが、今年度は直接あってグラフスペクトル理論の上記の研究を推進する予定である。また、国内の数値計算の専門家と、多重固有値の精度保証付き数値計算の改良が行えるか議論をする予定である。 今年度は国際学会ICIAM2023、および国内学会JCCA2023で学会発表を行い、他の研究者との交流を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、昨年度は外国出張が制限されていたために、海外に行きにくかったこと、および国内会議もほとんどが、遠隔によるミーティング形式が可能であったため、実質出張旅費として使用する分が少なかった。2023年度は制限が緩和されたため、国内および海外への出張旅費として使用する予定である。また、海外の研究者を日本へ招き共同研究をする費用として使用する予定である。
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