2023 Fiscal Year Research-status Report
社会的ジレンマにおける負けないことが保証された直接互恵戦略の研究
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21K03362
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
村瀬 洋介 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (30709770)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 進化ゲーム / 協力 / 直接互恵 / 繰り返しゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
繰り返し囚人のジレンマに代表される社会的ジレンマの問題は、ゲーム理論における中心的テーマとして長らく研究されてきた最も基本的な問題である。これら のゲームにおける有効な戦略として、しっぺ返し戦略 (Tit-for-Tat)をはじめとした多くの戦略が提案されてきたが、一般にこれらの戦略には一長一短が存在す る。我々は、近年これらの問題において、「友好的ライバル戦略」という既存の戦略の「いいとこ取り」をした様な新奇な戦略クラスを発見した。 本研究課題では、このクラスの戦略の研究をさらに進展させるため、次の2点を具体的目標としている。(1)一般のn-player の公共財ゲームにおいても有効な戦略を構築する。(2)友好的ライバル戦略が進化の過程においてどのような経路を経て生じるか(あるいは生じないか)を進化ゲームを用いて明らかにする。 (1)については昨年度までの研究ですでに、一般のn人ゲームにおける友好的ライバル戦略を発見することに成功し、論文として成果を出版している。 昨年度は(2)の研究に取り組んだ。友好的ライバル戦略は記憶長の長い戦略の中にしか存在しないため、記憶長3の戦略空間(10^19もの戦略が存在する)の中での進化の計算を行なった。その結果、通常の均一的な集団を考えると友好的ライバルは進化の結果現れないことが明らかになった。友好的ライバル戦略の強力さを考えると驚くべきことだが、友好的ライバルは非常に稀な頻度でしか存在しないためである。しかし、集団がグループに分割された自然な構造の中では、そのような稀な友好的ライバルが進化の結果現れ、通常協力が進化しないくらい協力の利益が小さい場合にすらほぼ完全な協力が達成されることが明らかになった。この結果は集団の構造が協力の進化に重要な役割を果たしていることを示している。この内容は論文として発表され、学会での発表も精力的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で目標としていた2件について研究を行い、それぞれ論文として発表することができた。 これらに加えて、国際共同研究強化Aの研究にも採択され、間接互恵についての研究も進展させることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
これらの二つの研究目標に加えて、間接互恵についての研究にも着手する。特に本研究で集団に構造がある場合の進化について、間接互恵でどうなるか検証する。 また、これまで得られた研究成果を国内外の学会で発表し、周知に努める。
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Causes of Carryover |
国際共同研究強化Aに採択され、昨年度はそちらを優先したため。 次年度に海外渡航旅費及び論文掲載料などとして有効活用する予定。
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