2021 Fiscal Year Research-status Report
Numerical analysis of analytic functions based on hyperfunction theory
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21K03366
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
緒方 秀教 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50242037)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 数値解析 / 佐藤超函数 / 複素関数論 / 変数変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の2点がこれまでの研究実績である. (1.佐藤超函数論に基づく関数近似、数値微分および数値不定積分)佐藤超函数論は複素関数論に基づく一般化関数の理論であり,超函数とよばれる一般化関数を定義関数とよばれる複素解析関数の実軸上の境界値の差で表す.そして,通常の関数も,標準定義関数という定義関数を構成することにより超函数として表すことができる.本研究ではこのことに着目して関数近似・数値微分・数値不定積分を行う方法を考案した.具体的には,近似の対象とする関数に対し,標準定義関数を数値積分および連分数を用いることにより数値的に求め,それを用いて関数近似を超関数として与え,さらに,標準定義関数の導関数・原始関数をもちいて数値微分・数値不定積分を与える.そして,数値実験により本方法の有効性を確かめた.本研究の成果は国内学会で口頭発表し,和文誌に論文投稿した. (2.IMT型変数変換を用いた数値不定積分および第2種Volterra型積分方程式の数値解法)数値計算において変数変換を用いた技法は数値積分でよく用いられてきた.ところで近年DE変換とよばれる変数変換は,Sinc近似という関数近似の技法と組み合わせて,数値積分以外の数値計算(積分方程式、微分方程式など)に用いられるようになった.それに対し本研究では,数値積分で用いられているもうひとつの変数変換「IMT型変換」について,周期関数に対するSinc近似と組み合わて数値不定積分および1次元第2種Volterra積分方程式に応用する数値計算法を考案した.そして,数値実験および理論誤差解析によりその計算法の有効性を示した.本研究の成果について,数値不定積分法は国内学会で口頭発表し和文誌に論文投稿して採録された.積分方程式の数値解法は国内学会で口頭発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
佐藤超函数論に基づく数値解析の研究においては,当該研究期間以前までに数値積分およびFourier変換の数値計算法を考案した.これを受けて本研究課題では,研究の原点に立ち返り,佐藤超函数論の視点から関数近似を行うということを第一の研究目的・計画に挙げた.具体的には,「研究実績の概要」に記したように,超函数の標準定義関数の近似計算に基づく関数近似を行うことである.そして実際,本研究の1年目において,関数近似・数値微分・数値不定積分を考案するという業績を挙げた.こうして本研究課題すなわち佐藤超函数に基づく数値解析の研究において,研究目的のひとつをほぼクリアすることができ,様々な数値計算に対する計算手法を考案するという目標もひとつ達成できた.その意味で本研究課題は順調に進捗していると判断する. さらに本研究では,IMT変換を用いた数値計算法という新しい研究のアイディアを思いついた.変数変換に基づく数値計算手法の開発は複素関数論に関連する数値解析の研究の主要なテーマのひとつであり,従来,数値計算で有名なDE変換については多くの研究がなされた.それに対し,本研究ではもうひとつの有名なIMT変換についても様々な数値計算に応用できるということを示唆するものであり,変数変換に基づく数値計算法において大きな一歩であると自負する.これは,複素関数論に基づく数値解析であるという点で,元来の研究課題である佐藤超函数論に基づく数値解析と関連した研究であるとみなすことができるので,新たに研究テーマに加えることにした.この研究の結果は,佐藤超函数論による数値解析の研究にもフィードバックを与えると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の次の課題として,積分方程式,微分方程式に対する数値解法の開発,本研究の成果である数値解法のソフトウェアの開発,そして,新たな研究として浮上したIMT型変換の数値計算への応用の3点が挙げられる.これら2点の課題の解決を今後の研究の推進方策とする.具体的な方策内容は以下に記すとおりである. (1.積分方程式・微分方程式の数値解法)これに対し,これまでわかった関数近似等の手法を直接応用するのは難しいと考えられる.なぜなら,これまで得られた関数近似等の方法は,佐藤超函数の定義関数に対する連分数近似に基づいているからである.一方,従来の積分方程式・微分方程式に対する数値解法は,何らかの基底関数による展開により近似解の形を設定して,積分/微分方程式を連立一次方程式の問題に帰着させる方法をとっている.そこで,佐藤超函数論に基づく数値計算法でも,基底関数の一次結合で関数近似を行えるかということを考える. (2.ソフトウェアの開発)佐藤超函数論に基づく数値計算法はいろいろ考案してきたが,実用に向けてはいくつものハードルを乗り越えなければならない.本研究で扱っているものは本質的には解析関数論に基づく数値計算法である.近似の対象とする関数の関数論的性質(解析的である領域,特異点の位置など)に精度が左右され,それにより適切なパラメータ設定をしなければならない.これではuser-friendlyな計算とは程遠い.その問題を解決するために,まず,パラメータ選択に対して頑強となるように数値計算法を改良することが課題となる. (3.IMT型変換の応用)これについては,IMT型変数変換を周期関数に対するSinc近似と組み合わせればいろいろな数値計算ができるという見通しがついている.今後は,微分方程式に対するGalerkin法,微分方程式の固有値問題などに対する応用を行っていく.
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Causes of Carryover |
当初計上していた旅費について,新型コロナウイルス禍が予想以上に長引いたことになり学会等がすべてオンライン形式となったため,旅費の使用がなくなったため.
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Research Products
(4 results)