2022 Fiscal Year Research-status Report
Generalization of risk value measures from the viewpoint of stochastic systems and its application to various types of risk assessment
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21K03374
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三澤 哲也 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10190620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮原 孝夫 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 名誉教授 (20106256)
宮内 肇 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (20181977)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 確率系 / リスク価値尺度 / 内部リスク回避度 / 双鋭感的価値尺度 / プロジェクト事業投資 / 太陽光発電 / FIP制度 / 出力抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者と分担者は、プロジェクト事業や証券投資で扱われる不確実性を伴うキャッシュフローやリターンを確率系として捉えたうえで、リスク回避的な事業者・投資家にとっての投資価値を測るリスク鋭感的価値尺度(以下RSVM)を定式化し、その数理的研究や発電事業などへの実務的研究を実施してきた。最近、その成果を拡張することで、リスク愛好的側面も有する事業家によるベンチャー事業の評価、あるいはシステム信頼性という投資とは異なる視点のリスク評価など、多様なリスク価値評価に活用しうることが判明しつつある。本研究では、こうした事実を背景に、RSVM自身やその適用対象を拡張したうえで、その数理的性質と実務的有用性について検証することを目的としている。令和4年度の研究実績の概要は以下の通りである。 代表者・三澤哲也は、分担者・宮内肇とともに電力システム分野における発電事業へのRSVM活用と課題についてこれまでの成果の整理を行い、改めてRSVMの有効性について検討を行った。またRSVMの信頼性工学分野への展開を見据えて、医療機器に関連する事故報告の統計的な傾向に関する事例研究を行った。 分担者・宮原孝夫は、リスク鋭感的価値尺度(RSVM)と双鋭感的価値尺度(BSVM)を動学的に拡張定式化したうえで、その応用・適用法を検討した。 分担者・宮内肇は、2022年4月から再生可能エネルギー電源出力の買取りに使われているFeed in Premium(FIP)制度下での蓄電池を併設した太陽光発電事業モデルに対するRSVM評価を行った。その結果、太陽光発電の総容量の増加により最適な蓄電池容量が大きくなること、蓄電池容量を大きくするにつれ、太陽光発電がより多く導入される2030年の想定電源構成のRSVMが現状の電源構成のRSVMに近づくことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度も引き続きコロナ感染症対策が叫ばれる不自由な環境の中ではあったが、代表者や分担者の個別研究あるいは共同研究を通じてほぼ予定通り研究は遂行できたと考えている。 代表者・三澤哲也は、分担者・宮内肇とともに電力システム分野におけるRSVMの活用可能性と課題に関するこれまでの研究成果を整理した。その内容の一部は、東京大学APET第38回イブニングセミナー『電力・エネルギーシステムへの異分野研究の適用』(令和5年1月27日)における招待講演において公表した。またRSVMの展開可能性を探るために行った、医療機器による事故報告に対する統計分析の事例研究についてもすでに論文化されている。 分担者・宮原孝夫によるRSVMおよびその拡張の一種である双鋭感的価値尺度(BRSVM)については、それらを含めた研究成果をまとめて本にすることを目指しており、現在その準備を進めている。 分担者・宮内肇は、FIP制度下での太陽光発電事業の評価を行うために、現状モデルと2030年想定モデルの両者を作成し検討を行った。これらのモデルはより現実に即したモデル化になっており、その場合でもRSVMによる事業価値評価が有用であることを示すことができた。これらの成果は学会等の口頭発表にて公表されている。 以上のように、本研究テーマに関わるいくつかの成果は、すでに論文や口頭発表の形で公表されており、それらを基盤に今後さらに研究が展開されていく予定である。このことから研究はおおむね順調に進展しているものと、自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には今年度の成果に基づいて、引き続きリスク鋭感的価値尺度の拡張定式化およびその応用研究について、各自のテーマ、共同研究テーマに取り組む予定である。特に、研究課題の最終年度を迎えることから、それらから得られた成果を総合的にまとめ、今後の展開や課題解決の方向性について、共同研究会の中で検討していく予定である。 代表者・三澤哲也はRSVMの実務分野における活用において最大の課題となる、内部リスク回避度の推定手続きについて分担者・宮内肇とともに取り組む。同時に引き続きシステム信頼性、安全性という視点から見た、RSVMの可能性を検討する予定である。その対象としては電力システム関連の話題はもとより、令和4年度より開始した、医療関係の安全性リスクの評価なども視野に入れて取り組む予定である。 分担者・宮原孝夫は、現在までの研究成果を引継ぎ、RSVMによる価値評価法の適用分野を広げ、その有用性を引き続き検証する。同時に、これまでの研究成果を総合的にまとめることを目指す。 分担者・宮内肇は、RSVMによる電気事業の事業価値評価と並行して、RSVMを用いた電力系統の供給信頼度評価に関する検討を行っている。今後は、この供給信頼度評価に力点を置いて研究を進める計画である。特に、期待値で表されるLOLPなど既存の供給信頼度指標による評価との整合も考慮しながら、RSVMで用いているリスク回避度パラメータβの決定法などについて検討を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度当初もコロナ感染症対応に伴う学会や研究会の遠隔開催が多く実施されたが、令和5年度に向けてコロナ感染症の分類の引き下げが予定されるなど、感染がほぼ落ち着きを見せだしたのを受けて、令和4年度当初に見込んでいた出張旅費等の一部を令和5年度に回して使用することとしたため。
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Research Products
(4 results)