2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Mathematical Planktology by the Analysis of Their Skeletal Structures Using Computational Geometry
Project/Area Number |
21K03376
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
吉野 隆 東洋大学, 理工学部, 教授 (60269496)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 数理プランクトン学 / 計算幾何学 / 放散虫 / 有孔虫 / 円石藻 / 離散微分幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題で設定している3つのテーマ(A:放散虫の進化過程における骨格構造の最適化過程,B:円石藻の円石被覆における円石形状・配置の最適化,C:有孔虫の骨格構造と姿勢制御の関係)を並列に検討した. 課題A「放散虫の進化過程における骨格構造の最適化過程」では,放散虫 Didymocyrtis 属について,画像処理技術を用いた大規模データ解析の手法を検討した. Didymocyrtis 属の特徴である回転楕円体をふたつ連結した構造を特徴づける幾何学的なパラメータを検討して,このパラメータ値を自動的に取得する方法について検討した.現在は複数の画像についての自動計算に成功しただけであるが,この方法がさまざまな Didymocyrtis 属の種に適用可能かを検討する課題が残されている. 課題B「円石藻の円石被覆における円石形状・配置の最適化」では,球面上の最適被覆問題とみなし,幾何学的な検討を行う予定であったが,ほとんど進捗していない. 課題C「有孔虫の骨格構造と姿勢制御の関係」では形状を説明する数理モデルの一般化を検討し,離散微分幾何学の手法を用いた新しい骨格構造モデルを構築した.新しいモデルは,これまでの有孔虫の骨格構造モデルにあった絶対的な軸(殻構造を構築する上でどうしても必要だった3次元空間内の軸)を使わないという特徴がある.これによって,有孔虫は特殊なそして絶対的な方向を空間内に持っているのかという(科学的には検討するのが厄介な)問題を回避することができる.さらに水中での姿勢を数値計算する近似的な方法も確立した.具体的な計算はこれからであるが,有孔虫の水中での姿勢に対して殻構造がどのような影響を与えているのかを知る手がかりになると考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の3つのテーマについて検討を続けているが,コロナの影響もあって当初の予定よりもやや遅れている. 課題A「放散虫の進化過程における骨格構造の最適化過程」は,当初は2022年度の後半に開始する予定であった.これは2021年度に予定していた別の属(Pantanelium属)についての研究が予想以上に進まなかったためである.この研究は申請時は開催すると考えていた国際会議での議論を前提にしてすすめる予定であった.しかし,この国際会議が延期になり諸外国の研究者の意見を聞くことが困難になった.今後はメールやビデオ会議システムを積極的に利用して議論を行っていく予定である. 課題B「円石藻の円石被覆における円石形状・配置の最適化」では,球面上の最適被覆問題を検討する予定だった共同研究者との議論がほぼ行えなかったことが大きい.被覆についての研究は充填についての研究に比べると圧倒的に少ないことも遅れが生じている理由になっている. 課題C「有孔虫の骨格構造と姿勢制御の関係」では新しい骨格構造モデルを構築したものの,その妥当性をどのように示すのが効果的かを決断することができなかった.他のモデルで用いられているパラメータと新モデルのパラメータの関係を検討して,似たような結果を得ることはできたが「どちらが良い結果なのか」を判断することができなかった.投稿論文として完成させるためにはこの部分は避けては通れないために引き続き検討していきたいと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の3つのテーマを推進するひとつの方法として,「手に取って見られる模型の製作」が重要であると判断し,3Dプリントの環境構築を開始している. 課題A「放散虫の進化過程における骨格構造の最適化過程」は,現在取り組んでいる Didymocyrtis 属については2次元画像処理のため無関係である.一方,もう一つの対象である Pantanellium 属の解析については,もともとのデータが3Dであるために3Dプリンタによる模型の製作はさまざまな方向から模型の構造を見ることができる利点がある. 課題B「円石藻の円石被覆における円石形状・配置の最適化」では,球面の点配置を手に取って見られる手法を検討する.その結果として,本研究課題について肉眼による観察が可能になり議論が潤滑に進むと期待されている.2022年度には研究協力者が来日するのでその時期に議論を進めることで研究活動を推進させる. 課題C「有孔虫の骨格構造と姿勢制御の関係」では新しい骨格構造モデルやこれまでの骨格構造モデルの結果をプリントアウトして比較検討が可能になる.このようにして比較ができることは構造の特性を把握することにとどまらない.実際の殻データと計算結果をプリントアウトして比較することで,上述の「絶対的な軸は存在するか」といった,モデル構築の根本に関わる問題を検討することが可能になる. コロナの蔓延に伴う閉鎖的な状況が開放的な方向に改善されることで研究は推進できると考えている.国内・海外の研究者と積極的に議論を行うことで研究を推進させていきたい.
|
Causes of Carryover |
当初予定していた海外出張が延期または中止になってしまったために次年度使用額が生じてしまった.次年度は延期になっていた出張計画を遂行するほかに,執筆・投稿をより積極的に進めて計画の遅れ分を解消する.
|