2021 Fiscal Year Research-status Report
超対称局所化に基づくゲージ理論の幾何学的性質及び可積分構造の研究
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21K03382
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 豊 東京工業大学, 理学院, 研究員 (90716705)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 超対称ゲージ理論 / 超対称局所化 / 壁越え現象 / 量子可積分系 / クーロンブランチ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.表面演算子と量子可積分系の研究 弦理論における双対性から5次元超対称ゲージ理論における表面演算子が存在し、その期待値が量子可積分系で知られている楕円ルイスナー演算子に関係しているが予想されていた。5次元超対称ゲージ理論において適切な境界条件を課す事により表面演算子を定義し、超対称局所化の方法を用いることにより表面演算子の期待値を計算することに成功した。その結果、オメガ背景の元で表面演算子の期待値を変形量子化したものが楕円ルイスナー演算子に一致することを示した。また楕円ルイスナー演算子の可換性は超対称ゲージ理論側では、経路積分に寄与するモノポール解のモジュライ空間に関する楕円種数に壁越え現象がないことに関係していることを明らかにした。この結果により第16回中村誠太郎賞を受賞した。
2.ボーテックス分配関数の幾何学的性質の研究 超対称ゲージ理論においてボーテックス背景上で経路積分を行う事によりボーテックス分配関数と呼ばれる物理量が定義される。ボーテックス分配関数は超対称局所化を用いて計算されるが、ファイエ・イリオポロス定数の符号に依存し値が不連続に変化する壁越え公式が予想されていた。ボーテックス分配関数と壁越え公式の幾何学的解釈、及び証明を与えることを目標とした研究を行った。その結果、ボーテックス分配関数はハンドソークイーバーのモジュライ空間上の積分に一致することを示した。また物理で予想されていた壁越え公式はハンドソークイーバーのモジュライ空間の安定性条件に対する壁越え公式として定式化されることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表面演算子の研究に関しては楕円ルイスナー演算子との関係を明らかにすることを当初の目標として研究を行い、目標を達成することができたためおおむね順調に研究が進んでいると考えられる。
ボーテックス分配関数の壁越え現象は、超対称ゲージ理論に現れる物理量が幾何学の対象であるクイーバーのモジュライ空間の安定性に関する壁越え公式を予言するため興味深いと考えられる。また物理において知られていた壁越え公式を数学的に定式化することに成功したため、当初の目標を達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
表面演算子を4次元に次元簡約すると線演算子が定義される。線演算子には磁荷と電荷を持ったダイオン線演算子が存在する。このダイオン線演算子の期待値にはモノポール方程式の解のモジュライの自由度が寄与すると考えられるが、これまで研究されてこなかった。そのため今後はダイオン線演算子の期待値を局所化を用いて決定することを考えている。
3次元のボーテックス分配関数の壁越え公式に類似して5次元のインスタントン分配関数にも壁越え公式が予想されている。今後の研究では5次元のインスタントン分配関数に対する証明を行うこと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は3月の物理学会が新型コロナウイルスで急遽オンライン開催になったため執行予定であった費用が浮いたため。使用計画は研究会や学会に参加するために旅費に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)