2022 Fiscal Year Research-status Report
広帯域振動スペクトロスコピーによる強相関ボーズ流体研究
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21K03383
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
檜枝 光憲 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (30372527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 淳子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70377018)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ボーズ流体 / 超流動 / ヘリウム4 / 量子相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関ボーズ流体の超流動応答は、その次元に応じて測定周波数に強く依存する可能性が実験・理論両面から指摘されている。よって広帯域での振動子実験は、ナノ空間中に制限されたヘリウム4の新規超流動のダイナミクス研究のための非常に有効なツールと成り得る。我々は、まず擬1次元系の新奇な超流動性に着目し、1次元配向性多孔質膜中のヘリウム4ナノチューブに注目してきた。今回実験で使用した配向性多孔質膜は、0.1μmのアルミナ孔の中に直径3.4 nmのナノ細孔を合成したものである。この配向性多孔質膜片(1mm×2 mm)を、ねじれ振り子(1KHz)とAT-cut水晶振動子(5MHz)の中間の周波数帯にある音叉型水晶振動子(32 kHzおよび100kHz)の先端の側面にドータイトで張り付けることで、振動方向と細孔軸方向とをそろえた実験を実施した。ヘリウム4導入量が0.50 mmolの時、温度を下げると0.84 K(Toh) で共振周波数の上昇、および0.82 K(Tph) でエネルギー散逸のピークが観測された。さらに温度を下げると0.27 K(Td) で毛細管凝縮による急激な共振周波数の低下が観測された。系統的にヘリウム4導入量を増加してもこの共振周波数とエネルギー散逸ピークが観測され、これらの温度TohとTph は高温側にシフトしていった。実験で観測された周波数上昇の大きさと理論的な見積もりとの比較より、TolとTpl はそれぞれアルミナ孔とナノ細孔内の超流動に対応していると結論される。一方で32 kHz の測定では、データスキャッターによる感度不足により100 kHz で見られたような超流動由来の振る舞いが観測できなかった。今後、感度改善のためにより大きな多孔質膜片を用いた実験を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、2021年度の1次元配向性多孔質膜中のヘリウム4の超流動性の予備実験(音叉型水晶振動子)に引き続き、吸着量等のパラメータを系統的に変化した実験を実施することにあった。100kHzのチューニングフォークにおいて、系統的に吸着量を変化した測定を実施し、1次元細孔中の超流動応答と解釈可能な信号を検知し、超流動転移温度が高温側にシフトする様子を捉えた。しかしながら32kHzのチューニングフォークについては測定を実施したものの、感度不足により超流動による明らかな応答を観測できなかった。よって本研究の主題である超流動性の周波数依存については未だに議論できていない状況であり、そのため進捗がやや遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は本研究遂行の最終年度として、2022年度に得られた成果を元に、1次元配向性多孔質膜を付着した音叉型水晶振動子(32 kHzおよび100kHz)の実験を継続する。100kHzに関しては昨年度の実験より感度不足が示唆されているため、感度を大きくするために、より大きな多孔質膜片を用いた実験を実施する。また、さらに可能であれば、別の周波数の試料も作成し実験を実施する。測定はいろいろな吸着量に対して系統的に実施し、様々な原子相関を持った1次元細孔中ヘリウム4量子流体に対して温度スイープ測定を実施する。原子相関制御は、ナノ構造上の粒子数を制御し密度(原子間距離)を変化することで行う。粒子数・位相の不確定性関係より原子相関を強めると位相ゆらぎが増強され超流動が抑制される様子を観測する。複数の測定周波数による振動子実験で得られた結果より、1次元細孔中ヘリウム4の超流動応答による共振周波数・エネルギー散逸の温度変化・周波数依存と、朝永-ラッティンジャーボーズ流体の理論を比較検討する。さらに超流動オンセット、およびエネルギー散逸ピーク温度をプロットすることで、(A)量子臨界領域・相図の決定、(B)臨界指数の決定、(C)量子臨界領域における普遍性等を議論する。
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Causes of Carryover |
2022年度も引き続きコロナ感染症の影響により、打合せや学会等がほぼ遠隔ベースで実施されたため、旅費を計画通りに使用できなかった。また消耗品費についても、交換等が当初計画よりも少なく済んだ。これらは次年度の成果発表等のための学会参加や打合せの旅費として有効活用する。
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Research Products
(4 results)