2021 Fiscal Year Research-status Report
Construction of effective theories based on hidden symmetries and their application to strongly correlated quantum liquids
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21K03384
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西田 祐介 東京工業大学, 理学院, 准教授 (80704288)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | フェルミ気体 / 輸送係数 / 久保公式 / ボルツマン方程式 / シュウィンガー機構 / 完全計数統計 / エフィモフ効果 / ボルン・オッペンハイマー近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主たる研究実績として、共鳴的に相互作用する2成分フェルミ気体における輸送係数を決定した成果を挙げる。ここでは、高温極限においてせん断粘性率と熱伝導率に対する久保公式を厳密に評価し、それがフガシティに関する展開の最低次において線形化されたボルツマン方程式に帰着することを示した。これまでの研究では、ボルツマン方程式の導出は緩和時間近似に相当する不完全なものしかなかった。本研究では、単純にはフガシティに関して高次となる項のうち、ピンチ特異性のためゼロ振動数の極限において最低次と同等の大きさになる項を全て足し上げることで、頂点関数に関する自己無撞着方程式を導き、それが線形化されたボルツマン方程式に完全に一致することを示した。また、2次元と3次元の両方の場合に線形化されたボルツマン方程式を数値的に解くことで、高温極限におけるせん断粘性率と熱伝導率を散乱長の関数として決定した。特に、両者の比で与えられるプラントル数は、緩和時間近似のように一定とはならず、散乱長の関数として非単調な振る舞いをすることを明らかにした。 また、上述の研究実績の他にも、シュウィンガー機構における粒子対生成数の確率分布を、メゾスコピック系の物理における完全計数統計の手法を用いて決定した成果や、同じ電荷を持つ2粒子と反対電荷を持つ1粒子から成る荷電3体系が、離散スケール不変性に従うエフィモフ的な束縛状態を形成することをボルン・オッペンハイマー近似を用いて示した成果、も得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の通りには進展していないが、ボツルマン方程式の導出、輸送係数の決定、シュウィンガー機構やエフィモフ効果に関する新展開など、研究課題立案の時点では予期していなかった新しい成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって予期せず新たに得られた成果をさらに発展させるとともに、研究課題である隠れた対称性に基づく有効理論の構築と強相関量子流体への応用を推進し、さらには両者を融合させた研究の展開を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は研究に予期しなかった新たな進展があり、その研究を推進することとその成果をまとめた論文を執筆することに時間を費やした。その結果とコロナ禍により、計画時に想定していた学会発表のための出張を行えなかったため、主に旅費において未使用額が生じた。 本年度の研究によって得られた成果を積極的に発表するため、繰越額は次年度において主に学会発表のための旅費として使用する計画である。
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