2022 Fiscal Year Research-status Report
High Performance Computing for Materials Simulation by Quantum-Classical Hybrid Algorithms
Project/Area Number |
21K03391
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 宗 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40507836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 達彦 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (20816730)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子コンピューティング / 量子・古典ハイブリッドアルゴリズム / 機械学習 / ブラックボックス最適化 / イジングマシン / 量子アニーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題において,2022年度は主に以下の2点の研究を行った.
第一に,物質シミュレーションの高速化につながることが期待される,量子アニーリングマシンを含むイジングマシンやゲート式量子コンピュータの性能を引き出すアルゴリズム開発を行った.具体的には,対象とする問題に含まれる制約条件を満たす状態間を量子遷移する方法の検討や,イジングモデルの固有エネルギーを変えずに,状態間のハミング距離のみ変える「エネルギー地形変換」,また,以下に述べる「マージ手法」や「スピン変数消去法」を提案した.「マージ手法」とは,局所解から効率よく脱出する手法として,単スピンフリップを動作原理とするイジングマシンにおいてマルチスピンフリップと等価な状態遷移を可能にする手法である.これを典型的な組合せ最適化問題に対して適用し,従来手法に対して残留エネルギー(イジングマシンの評価指標の一つ)を削減することに成功した.「スピン変数消去法」とは,線形制約をもつ組合せ最適化問題を効率的かつ高精度に解くための手法である.イジングマシンは入力可能な変数の個数に制限があるため,組合せ最適化問題を少ない変数の個数で定式化することが重要となる.標準的に用いられているペナルティ法と比較して,スピン変数消去法はより少ない変数の個数で組合せ最適化問題を定式化できる.この手法により,より大規模な組合せ最適化問題をイジング計算機で取り扱うことが可能となった.
第二に,量子アニーリングマシンを含むイジングマシンによるブラックボックス最適化手法について,我々の提案手法の適用範囲を広げるための方法を検討した.複数の目的関数からなる多目的ブラックボックス最適化や,多値変数の場合についてのブラックボックス最適化に対応可能な方法を構築した.本研究成果は,プレプリントサーバ(arXiv:2209.01016)や,国際会議AQC2022等で報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度に進める計画であった物質シミュレーションの高速化につながることが期待される,量子アニーリングマシンを含むイジングマシンやゲート式量子コンピュータの性能を引き出すアルゴリズム開発ならびに,量子アニーリングマシンを含むイジングマシンによるブラックボックス最適化手法の適用範囲拡大について進めた.
特に,量子アニーリング等イジングマシンの性能を引き出すアルゴリズム開発については,当初の計画以上に進展したといえる.研究分担者の白井は,制約付き組合せ最適化問題に対し,局所解から脱出する新たなアルゴリズムである「マージ手法」の開発,ならびに,スピン数を削減するアルゴリズムである「スピン変数消去法」の開発を行った.これらは情報科学の知見と統計力学の知見を融合して生まれた新しいアルゴリズムである.「マージ手法」を用いることで,典型的な組合せ最適化問題として知られる二次ナップサック問題や二次割当問題に対し,残留エネルギー(イジングマシンの評価指標の一つ)を削減することに成功した.また「スピン変数消去法」を用いることで,典型的な組合せ最適化問題の一つとして知られる二次割当問題に対し,従来手法に比べ,スピン変数の個数を少なくし,かつ,残留エネルギーを削減することに成功した.これらの研究成果はそれぞれ,IEEE Transactions on Computersに掲載されただけでなく,いくつかの学術的会合でも報告した.また,研究分担者の白井が所属する早稲田大学からそれぞれの成果についてプレスリリースを発出し,日刊工業新聞等で取り上げられた.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度,2022年度の研究成果を受け,今後は以下の二点に焦点を当て,研究を進めていく予定である.
第一に,物質シミュレーションの高速化につながることが期待される,量子アニーリングマシンを含むイジングマシンやゲート式量子コンピュータの性能を引き出すアルゴリズム開発について,これまで得られた知見をもとに,具体的な最適化問題に対する解法性能を検討する.これまで多種多様な制約をもつ組合せ最適化問題をイジングマシンで効率よく解くための手法として,制約を満足する解空間内での遷移を可能とするマージ手法,また制約を満足しない解空間を縮小する前処理手法であるスピン変数消去法を提案した.今後は,さらに制約を満足しない解を制約を満足する解に変換する後処理手法の有効性について検討する.具体的には,ゲート型量子コンピュータや量子アニーリングマシンを含むイジングマシンと後処理を行う古典コンピュータとをハイブリットに活用することで効率的に制約つき組合せ最適化問題を解法する手法の構築を目指す.また,マージ手法・スピン変数消去法(前処理手法)・後処理手法を融合したアルゴリズムの構築とそのアルゴリズムを動作原理とするイジングマシンハードウェアやイジングマシンシミュレータを実現するための研究を進める.
第二に,量子アニーリングマシンを含むイジングマシンによるブラックボックス最適化手法について,イジングマシンにおけるボトルネックを緩和する方法を検討する予定である.
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Causes of Carryover |
国内学会,研究会の招待講演をお引き受けしたため,参加を予定していた国際会議の現地参加が不可能となり,次年度使用額が生じました.2023年度の現地開催の国際会議参加等に充当する予定です.
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Research Products
(47 results)