2023 Fiscal Year Research-status Report
Non-equilibrium dynamics of integrable quantum systems: An algebro-geometric approach to quantum solitons with exact numerical solutions
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21K03398
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
出口 哲生 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (70227544)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子可積分系 / ベーテ仮設 / XXZ鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
孤立量子系の緩和の視点から見ると、量子系のダイナミクスに関しては、可積分系は非可積分系とは異なり、その量子系固有の興味深い時間発展の振る舞いを示す可能性がある。2023年度の研究により、開放端を持つ1次元格子系の上に定義された量子XXX鎖、すなわち両端点が存在する1次元ハイゼンベルグ模型において、興味深い時間発展の振る舞いが導かれる可能性が高いことが示された。 量子系のダイナミクスを厳密に追跡するためには、全ての固有状態を求めることが必要である。このため、下向きスピンが2個のセクターにおいて、量子XXZ鎖のギャップ領域における全ての固有状態に対応するベーテ量子数を解析的に厳密に求める研究を行い、完成させた。ただしこの研究では周期的境界条件下のスピン鎖を考えている。この研究を報告する論文を現在作成中で、ほぼ完成した。 一方、現実の1次元系では、周期的境界条件よりは開放端の境界条件の場合が実現される可能性が高いと考えられる。このため、下向きスピン2個のセクターにおいて、開いた境界条件下の1次元ハイゼンベルグ模型に対して、その固有状態を全て導く研究を開始した。すると、境界磁場が存在しない場合には、実数解や複素束縛解を表すベーテ量子数は、周期系の場合と対応することが分かった。ところが、実数解や複素束縛解の確率密度の分布を導いてみたことろ、境界磁場が存在しない場合でも、予想に反して分布は局在するパターンが規則的に出現するという、周期系の場合とは全く異なる振る舞いが観察された。この結果、開いた境界条件のXXX鎖における系の時間発展は、従来考えられていたものとはかなり異なる可能性があることが分かった。例えば、時間発展において波束の崩壊が起こるかどうか、現時点ではまだ不明である。非常に興味深い結果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
下向きスピン2個の場合に、 量子XXZ鎖の全ての固有状態に対する量子数を厳密に求める研究を行い、結果を得た。しかし、論文の作成が年度末に間に合わなかったため、進捗がやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
量子XXZ鎖の全ての固有状態に対する量子数を厳密に求める研究の論文を早急に完成させることを第一優先に進める。
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Causes of Carryover |
下向きスピン2個のセクターにおいて量子XXZ鎖の全ての固有状態に対応するベーテ量子数を求める研究の成果報告用の論文作成が2023年度中に完了しなかったことと、開いた境界条件下のXXX鎖の下向きスピン2個の場合の固有状態の確率密度分布が示す異常な振る舞いが2023年度中に明らかになったことから、研究期間を少し延長して論文の完成と開いた境界条件下のXXX鎖の研究を進めることが望ましいと判断した。この結果、学会参加旅費および論文投稿料を負担するために予算を残すことにした。
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