2021 Fiscal Year Research-status Report
Strong correlation and strong coupling effects in the excitonic phase and its vicinity region based on the first-principles calculations and the quantum many-body calculations
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21K03399
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大野 義章 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40221832)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 励起子相 / SmS / WTe2 / 第一原理計算 / 最局在ワニエ関数 / 多バンドハバード模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
価数揺動系SmSは、加圧により約0.6GPaで絶縁体相(Sm:2価)から半金属相(Sm:2.7価)に転移することが知られている。ごく最近、絶縁体相の低温で、強誘電転移を伴った励起子相を示唆する実験が報告され、注目を集めている。そこで本研究では、SmSの絶縁体相における励起子相の可能性を理論的に調べるために、第一原理計算による電子状態に基づいて、最局在ワニエ関数を用いて、多軌道有効模型(13バンドf-d-s模型)を構築し、励起子相に対するBCS型平均場近似を適用した。Smオンサイトのd-fクーロン相互作用Udfに起因する励起子相のオーダーパラメータが低温で有限となると、空間反転対称性によりゼロであるオンサイトのd-f混成が自発的に生じ、反転対称性を破る強誘電変位が電子格子相互作用を通して同時に有限となる励起子相が低温で実現することを明らかにした。 最近、単層遷移金属ダイカルコゲナイドにおいて、量子スピンホール絶縁体の可能性が議論され、注目を集めている。その中で、歪んだ1T’構造を持つ単層1T'-WTe2は、大きなバンドギャップ55meVをもつ量子スピンホール絶縁体の候補物質であり、大きなギャップの起源として励起子絶縁体の可能性が提案されているが、この物質における励起子絶縁体の研究、特に、定量的な理論研究は未だほとんど行われていない。そこで本研究では、第一原理計算による電子状態に基づいて、最局在ワニエ軌道を用いて低エネルギー有効模型(22バンドd-p模型)を構築し、Wのオンサイトd電子間クーロン相互作用、および、W-Teのサイト間d-pクーロン相互作用に対して、励起子秩序のBCS型平均場近似を適用した。その結果、現実的な相互作用の値において、ARPES実験を良く再現するエネルギーバンド分散が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SmSに対して本研究で得られた結果は、SmSの絶縁体相の実験でごく最近発見された強誘電転移を説明することに加えて、励起子絶縁体の基礎物理の観点でも重要な成果と考えられる。強誘電転移をともなった励起子秩序の可能性は以前から指摘されていたが、第一原理計算に基づいて定量的な計算を初めて行ったことは意義が大きい。 また、単層1T'-WTe2に対して本研究で得られた結果は、単層1T'-WTe2のARPES実験を説明することに加えて、励起子絶縁体の基礎物理の観点でも重要な成果と考えられる。特に、単層1T'-WTe2に対して、第一原理計算に基づく有効模型をいち早く構築し、励起子秩序の定量的な計算を初めて行った意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に実施したSmSや単層1T'-WTe2の研究と同様に、遷移金属カルコゲナイドTa2NiSe5に対して、第一原理計算および最局在ワニエ関数を用いて、Ta-5dとNi-3d、Se-4p軌道を考慮した30軌道d-d-p模型を構築し、電子間クーロン相互作用と電子フォノン相互作用を同時に非摂動的に取り扱える量子多体計算手法である動的平均場理論(DMFT)を用いて、励起子相の転移温度以上における擬ギャップ状態や、高圧の非自明な金属励起子相や新奇超伝導を明らかにする。DMFTは、2軌道ハバード模型などの基本模型において、BCS-BECクロスオーバー領域も含む励起子相の強相関・強結合効果の記述に有効であることが知られているが、現実的な多軌道有効模型に基づく実験と定量的に比較しうる理論計算へと本研究では発展させる。さらに、構築された手法を様々な励起子相候補物質の適用し、SmSの励起子相における4f電子の強相関効果や、WTe2の励起子相と巨大磁気抵抗効果との関係を明らかにする。
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Research Products
(21 results)