2021 Fiscal Year Research-status Report
Ab initio DMC-phonon calculations applied to layered materials
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21K03400
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
前園 涼 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40354146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 研太 北陸先端科学技術大学院大学, 情報社会基盤研究センター, 准教授 (60405040)
中野 晃佑 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50870903)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 第一原理 / 拡散モンテカルロ / フォノン / 層状物質 / 電子相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンや層状化合物で実現される新規物性開拓においては、電子格子相互作用が支配する特性の第一原理解析は重要な役割を担う。当該系では「層内を支配する共有性結合と層間の非共有性結合との混在」、「低次元化された電子伝導による電子相関増強」という二重苦が密度汎関数法を中心とした従前解析法の急所を突く形となり、十分な予見信頼性は達成されない。一方、第一原理量子モンテカルロ法は原理的に、この問題に最も適した手法と目されてきたが、フォースなどエネルギー微分量算定の実用化が未確立であった。本研究では、自然勾配法などの考慮により新たなブレークスルーを達成しつつある「第一原理量子モンテカルロ法によるフォース算定」を格子振動解析の実用化にまで結実させる事で「層状物質の第一原理電子格子解析における予見信頼性」に革新的な向上をもたらすことを目的として研究を進めている。初年度となる当該年度では、まず基礎となる方法論の開発に傾注した。微分勾配量を「エネルギー空間中の数値微分」と扱う長年行われてきたやり方から「波動関数空間での位相構造を考慮した勾配算定」に切り替えることで、統計誤差に著しい改善が見いだされることを明らかにした[分担者中野・代表者前園ら、Phys. Rev. B 103, L121110 (2021)]。期間後半に向けての応用展開では、現実の層状物質に第一原理量子モンテカルロ法が成功裏に適用された舞台を構築する必要がある。これらについても研究を進め、ボロン窒化物の層状構造[分担者本郷、代表者前園ら、J. Phys. Chem. C (2022)]、SiCナノチューブ系[分担者本郷、代表者前園ら、ACS Omega (2021)]に対して原著論文成果を挙げている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では現実系の層状物質適用は、計算資源の問題や、試行関数生成上の諸問題、特に擬ポテンシャル上の技術的制約に阻まれ、時間を要するものと予想されていた。この点、第一原理量子モンテカルロ用途の新たな擬ポテンシャル生成法が順調な進展を辿り、プロジェクト間の有機的連携で技術移転が進み、ボロン窒化物やSiCナノチューブ系の第一原理量子モンテカルロ計算の研究成果に繋げることができた。 非局所型擬ポテンシャルを用いる限り、第一原理量子モンテカルロ計算には、局所近似に伴う誤差が発生し、系統的コントロールができず予見信頼性を毀損することが長年の懸念とされてきた。非局所型構成の根本に立ち戻り、L2型と呼ばれる新たな方法を提案した。この実装を開発し、現実系に供する擬ポテンシャルを生成できる基盤を確保した。当該研究計画は、申請者らが確立したフォース算定技法を基盤として、フォノン計算を確立するという内容で構成された。当該期間中は、基盤となるフォース計算にも更なる進展があり、より効率化されたフォース算定技法を開発し、成果として公表するに至った[分担者中野、J. Chem. Phys. (2022)]。スペースワープ法と呼ばれる重点サンプリング法を適用して、フォースなど勾配量を算定する際に生じる特有の統計性悪化を回避するような重みづけサンプリングを施すことにより、フォース算定の統計誤差が劇的に改善する。具体的には、原子の変位に付随して、モンテカルロ積分の対象となる電子位置も同時に変位させることにより、統計誤差の低減を図る手法となっている。第一原理量子モンテカルロ法による物理量算定でネックとなるのは、統計的サンプリングに付随する統計誤差の収束が比較的遅い点にある。研究の最基盤にあたるフォース算定に、当初計画よりも更なる性能向上を得たことは、今後の研究進行を大きく加速させるポジティブな要因になる。
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Strategy for Future Research Activity |
ボロン窒化物の層状構造やSiCナノチューブ系で確立された第一原理量子モンテカルロ計算のプラットフォーム上で、量子モンテカルロ法フォノン解析に進めていく予定である。特に層状ボロン窒化物は標準的物質で、実験データの入手が期待できるため、フォノン分散の比較参照として解析を進め、どのような特性が従来法では記述が難しく、当該手法によってのみ捕捉することができるのかといった検討を進める。当該研究では、分担者中野が開発主務者となる第一原理量子モンテカルロ法パッケージ「TurboRVB」上で方法論上の先進手法開発を行っているが、確立されたアルゴリズムは順次、他の汎用パッケージに移植され活用されることとなる。研究チームでは第一原理量子モンテカルロ汎用パッケージ「QMCPack」にかかるプロジェクトメンバーも在籍し、複数パッケージに亘って運用に習熟している。こうした運用体制の利を活かして、移植活用を進める。汎用パッケージ上への方法論展開は、本研究の主眼となる「現実規模の固体周期系に適用した実用例を確立できるか」という挑戦課題の遂行上も極めて重要な達成事項である。当該研究は、フォノン計算に傾注した研究計画となっているが、その基礎となるフォース算定技法に大きな進捗を見ているので、フォノン計算に限定せず、フォース応用全般の課題にも展開していきたいと考えている。第一原理構造最適化に関して従来法では予見の難しい問題のプロトタイプ系を設定し、適用を進める。例えば、1次元原子鎖におけるダイマー化の問題など、以前から取り組みを続けてきた基礎的問題があるが、こうした系に対して、当該期間中に開発されたスペースワープ法が、どのような側面で、どれほどの記述性向上を実現しているかを検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延にかかる移動制限があり、当初参加予定であった国際会議、および国内の学会定期講演会がオンラインに切り替えられたため、当初計上していた旅費の執行が叶わなかった。これに加え、国際的な半導体供給不足による物品調達の遅れもあり、シミュレーションにかかる計算機部材の購入を次年度に見送るなどの措置を講じざる得なかった。次年度2022年度は、ワクチン接種の普及や医療体制の拡充などにより、国際的な対応状況が徐々に改善の兆しを見せており、研究計画に関連した諸外国渡航先における渡航制限などが解除されつつある。物品調達に関する国際的遅延も呼応して改善される見通しである。次年度使用計画額は、上記のことから、計画通り執行される見通しである。当該年度の未使用額については以下のように計画している。物品調達については、初年度執行分は次年度調達として、元来の次年度調達分とあわせて調達・執行する予定である。初年度に余剰となった旅費についても、当該計画にかかる研究打合せを拡充するなどして、次年度中での執行をめざす。初年度中に達成された研究成果は期待以上のものとなっており、呼応した研究展開範囲の拡張が見込まれている。夫々の拡張項目に対し、より積極的な国際協働開拓を画策すべく、有効性のある研究打合せ渡航を計画する。
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Research Products
(48 results)
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[Presentation] Kohn-Sham equation2021
Author(s)
R. Maezono
Organizer
6th African School on Elenctronic Structure Methods and Applications (ASESMA-2021), Online
Int'l Joint Research / Invited
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