2021 Fiscal Year Research-status Report
長距離相互作用系における異常現象の普遍性解析と応用
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21K03402
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 義幸 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40314257)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 長距離相互作用系 / 非熱平衡状態 / 転移 / 普遍性 / システム同定 / 線形応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界に存在する4つの基本的な力のうち重力とクーロン力は長距離力である。長距離力に支配される長距離相互作用系は、銀河・星団・プラズマ・流体など自然界に多く見られる。そして長距離相互作用系では、熱力学極限(粒子数無限の極限)で熱平衡状態に緩和せず非熱平衡状態にとどまり続けるなど、統計力学的見地からは異常な現象が現れる。長距離相互作用系は非相加的(系の部分分割が不可能)なため、相加性を仮定する統計力学とは矛盾していないが、統計力学の活用には限界が生じる。例えば、熱平衡状態では連続的な相転移しか起こさない系であっても、非熱平衡状態にまで対象を拡げると不連続な転移を起こすことがある。 転移が連続であるか不連続であるかは速度分布(Maxwell分布とは限らない)に依存する。Maxwell分布であれば連続転移となるが、ある特殊な速度分布では不連続となることが知られていた。つまりMaxwell分布と特殊分布の間に連続・不連続の境界があることが予想されるが、その境界についての知見はいままで得られていなかった。本年度はこの問題に取り組み、不連続転移を与える速度分布についてある普遍的な条件を得ることができた。また不連続性が強調される系の特徴についても知見も得ることができた。これらの結果は論文としてまとめられる予定である。 上の例のようなハミルトン系で得られた知見をもとに、研究範囲を結合振動子系などの散逸系にも拡張し、システム同定の問題にも取り組んでいる。各振動子の時系列からシステム同定を行うという他研究はあるが、本研究では独自に、オーダーパラメータの線形応答からシステム同定を行うことを試みており、同定可能性について良好な結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の主な研究の一つは、海外研究者との共同研究によって実施している。研究を効率的に推進するために海外渡航を予定していたが、新型コロナウイルスの影響によって渡航延期を余儀なくされている。メールやリモート会議などによって共同研究を継続する手段を確保してはいるが、効率性の点では対面での討議に及ばないと言わざるを得ない。このため研究の進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によりある程度の成果は得ているので、今後は成果をまとめていく。また新たな研究を立ち上げることにより、プロジェクト全体の推進も図る。具体的には、自然ハミルトン系と呼ばれているクラスからそうでないクラスへの拡張や、長距離相互作用系で観測される多時間スケール性の経験を活かして簡単な分子モデルを解析すること、ハミルトン系で得られた知見の散逸系への応用、などを予定している。新たな研究についても海外研究者との共同研究が重要な位置を占めているものがあるため、新型コロナウイルスが終息し海外渡航が可能となった後には、海外渡航による対面討議により効率的な研究の推進を図る。しかしながら渡航可能となる時期はいまだ不透明である。そのため、メールやリモート会議などの活用を継続する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は主に旅費と設備備品費を計上していた。旅費は海外研究者との対面討議を行うための海外渡航費を予定していたが、新型コロナウイルスの影響によって海外渡航を延期せざるを得ない状況となったため未使用となった。また海外渡航時にも研究を効率的に推進するため、設備備品費として高性能ノートパソコンの購入を予定していた。しかしながら、渡航そのものが延期となったため、次年度により高性能な製品が出ることを想定し、本年度の購入を見送った。
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Research Products
(6 results)