2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of dynamics and controllability of optically injected valley carriers
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21K03420
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
秋元 郁子 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (00314055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中 暢子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10292830)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バレーキャリア / バレーダイナミクス / IV族半導体 / サイクロトロン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、半導体物性物理学分野では電荷に代わるスピンやバレーなどの量子自由度が新たに注目され、省電力化をめざした次世代デバイスが開発されつつある。特に、室温でも堅牢な量子状態を用いるバレートロ二クス研究をさらに加速させるため、バレー分極の制御方法の確立が強く求められている。本研究では、我々が近年有用性を示してきたナノ秒時間分解サイクロトロン共鳴法(TRCR法)を拡張し、光励起法によりバレー分極キャリアを注入したうえで、外場(電場)駆動および温度擾乱によるバレー分極のダイナミクスを明らかにし、その制御方法の基礎を確立することを目的とする。 2021年度は、エネルギー構造やキャリア物性が良くわかっている高純度シリコン結晶を用いて、TRCR法による電場下でのバレーダイナミクスの研究をスタートした。高純度結晶試料(3×2×0.5 mm3)を用い、結晶の大きな面(011)面を2 mm幅のITO石英ガラス基板電極で挟み、内径3.2 mmのESR試料管内に配置した。電極への配線を工夫することにより、マイクロ波の共振器内でDC電場を印加できるようにして、DC電場を[011]軸方向に印加し、光もITO電極越し[011]軸方向に照射し、磁場は[100]軸に印加して、TRCR法を実施した。先にバレー分極注入が可能であることが分かっている波長( > 1040 nm)での光励起下において、300 V/cm以下の電場印加により、異なるバレー(e1,e2)間の散乱が促進されること、散乱の促進によりキャリアの減衰が早くなること、励起波長に依存するバレー分極がありそうであることが、時間分解スペクトル解析から判明した。また、今回の結晶方位では、光の偏光方向依存性は明瞭には分からなかった。今後、結晶方位を最適化することにより、より詳細なバレー分極の擾乱を明らかにすることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初のねらい通りの計測が可能であることが分かった。 ただし、液体Heの供給量不足で実験回数が少なかったところへ、最近の世界情勢の不安定化により一層液体Heの供給が不足しそうで、今後思うように実験ができない可能性が懸念される。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶方位を最適化した高純度シリコン結晶をすでに準備しているので、新しい試料でTRCR測定を実施し、さらに電場下でのTRCR測定を実施し、偏光依存性を含めて、より詳細なバレー分極の擾乱を明らかにする実験を進める。 液体Heが小口購入できない場合は、同様の設備のある分子科学研究所での共同利用へ申し込み実験を進めることを検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による行動制限と世界的な物流の混乱により実験に必要な液体Heの供給量不足が生じ、実験を見合わせることがあったので、実験回数が減り液体He代を消化していないことが主な理由である。また、実験装置のシステム更新を、当初見込みよりも安価に実施できたことも、使用額を次年度に繰り越すことになった一因である。 次年度では、液体Heの購入チャンスを伺い、実験頻度を上げられるようにして、適正な支出を実施する。
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Research Products
(3 results)