2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of thermal and optical properties of perovskite materials by advanced phonon calculations
Project/Area Number |
21K03424
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
只野 央将 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主任研究員 (90760653)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 構造相転移 / 非調和効果 / 高次フォノン散乱 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
有限温度における非調和フォノンを計算可能な手法として一次自己無撞着フォノン法(SC1)が広く用いられているが、SC1法はフォノン振動数を過大評価する傾向があるため、例えば誘電体の構造相転移温度Tcを過小評価してしまう。これを解決するため、SC1法では無視されるバブルダイアグラムを摂動的に考慮することでフォノン準粒子バンドのエネルギーを補正する手法を新たに開発した。開発した手法をハライドペロブスカイトCsPbBr3へ適用したところ、SC1法でおよそ200 Kであった立方晶<-->正方晶の構造相転移温度が420 Kとなり、実験結果(403 K)とよく一致する結果を得る事に成功した。また、バブルダイアグラムによる補正が格子定数に敏感に依存するため、有限温度における格子定数を精度良く予測することがTcの定量予測にとって重要であるという知見が得られた。
典型的な強誘電体であるBaTiO3に対しても精度検証を実施し、新手法がSC1法よりも高いTc予測精度を持つ事を確認した。DFT計算における交換相関汎関数に対するTcの依存性を検証した結果、LDAやGGA-PBE汎関数はTcをそれぞれ大きく過小評価・過大評価すること、GGA-PBEsol、GGA-AM05やmetaGGA-SCAN汎関数はより実験結果と近いTcを与える事が明らかになった。非調和フォノン計算の結果を用いて誘電率の温度依存性を求めたところ、Tc近傍で比誘電率が発散的に増大する実験結果とよく一致する温度依存性を得る事に成功した。
立方晶CsPbBr3においては、Tcに加え音響フォノンの線幅を第一原理的に計算した。フォノン散乱過程として最低次の3-フォノン散乱に加えて4-フォノン散乱を考慮する事で、非弾性中性子散乱の結果を良く再現する事に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バブルダイアグラムによる振動数補正を考慮したフォノン分散を計算可能な準粒子近似の開発を当初の計画通り進めることが出来た。また、構造相転移を定量予測に重要な要素(格子定数、交換相関汎関数)についても、計算例を蓄積し検証を進める事ができた。線幅計算や熱伝導率計算についても、4-フォノン散乱強度の計算やBoltzmann方程式の逐次解法の実装を進めることが出来たため、より高精度なフォノン物性予測が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
バブルダイアグラムによる振動数補正を摂動的にではなく自己無撞着に計算するためのアルゴリズムを検討し、自己無撞着な解がフォノン振動数や構造相転移温度Tcにどの程度重要であるかを定量的に明らかにすることを目指す。また、既に実施済みのCsPbBr3やBaTiO3だけで無く、より一般の立方晶ハライドペロブスカイトや酸化物ペロブスカイトの網羅計算を実施し、フォノンの非調和性の強さやバブルダイアグラムによる補正の大きさを決める構造・組成要因を同定する。
誘電率の温度依存性におけるフォノン散乱効果に関しても、当初の計画に従って研究を実施する。特に、Tcから温度を上げるにしたがって誘電率が減少する際の温度依存性を支配する要因を解明する事を目指す。さらに、バンドギャップの温度依存性計算を、開発済みの準粒子近似とAllen-Heine-Cardona理論を組み合わせることで実施し、温度変化に伴ってバンドギャップの変化を決定づける因子の特定を行う。
以上に加え、構造相転移前後でフォノン線幅や格子熱伝導率がどのように変化するのかと言う点についてもSrTiO3を用いて検証し、実験結果と比較することで構造相転移近傍におけるフォノンダイナミクスの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
当初オープンアクセス化を予定していた投稿論文が年度末までに出版に至らなかったため。
次年度に論文が出版される際にオープンアクセス化費用として使用する。
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