2022 Fiscal Year Research-status Report
変調構造をもつ希土類鉄酸化物におけるフェイゾンの実空間観察とその起源
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21K03431
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
浅香 透 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80525973)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フェイゾン / 変調構造 / 電荷秩序 / 希土類鉄酸化物 / 透過型電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
22年度は層状鉄酸化物の単結晶合成について、酸素分圧コントローラを用いた酸素分圧の精密制御により、ポストアニールなしで変調構造の長距離秩序が発達する単結晶試料の合成に成功した。その過程でわずかな酸素欠損により変調波数ベクトルが変化することも分かった。さらに、新しく陽イオンの不定比性も生じることがわかり、変調構造にも影響することが分かった。 得られた良質単結晶試料について、電子線誘起フェイゾンを21年度に確立した高速STEM法により確認した。さらに、収束電子線回折法においてもフェイゾンによるものと考えられる動的挙動を確認した。それについては動画撮影も可能であったため、これまでよりも高い時間分解能でのフェイゾンの計測の可能性を示唆した。 電場印加その場観察については、FIBにより作製したテスト試料を用いて実験を行い、高分解能TEM像の観察と同時にIVカーブを取得する方法を確立できた。ただし、接触抵抗の問題など、実試料の測定には注意を払うべき問題点が見出された。 これまで研究対象としてきたYb2Fe3O7の関連化合物であるYbFe2O4について、高速STEM法で観察したところ、Yb2Fe3O7と同様、電子線誘起フェイゾンを見出すことができた。我々が用いたYbFe2O4は平均的には非極性構造をもつと考えられたが、フェイゾン発生時、局所的には分極構造が発生していることが示唆された。この系についても電子線による構造解析には注意が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電場印加その場観察については、計画から少し遅れがあるものの、昨年度末に導入できた酸素分圧コントローラーにより、良質な結晶を得ることができ研究が加速したため。また、電子線誘起フェイゾンの別方法での観測や関連物質での観測に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は合成方法を確立した良質単結晶に対して、これまでの計測の再評価を行う。さらに、21年度に明らかにした不定比性と変調構造の関係を踏まえた測定も行う。これらの測定は新たに電子線誘起フェイゾンが発生することを見出したYbFe2O4についても実施し、本系の分極構造との関係などを明らかにする。 電場印加その場観察についてはこれまでに測定方法が確立できたので、Yb2Fe3O7およびYbFe2O4に対して、電気測定を行いながらフェイゾンの観測を行うことを試みる。また、電場誘起フェイゾンの存在にも着目し、測定を行う。 以上により得られた結果をまとめ、誘起フェイゾンについて理解する。
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Causes of Carryover |
半導体不足のため購入を計画した高圧電源の納期が延びたため、来年度使用額が生じた。この未使用分については23年度に物品購入により執行予定である。
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Research Products
(3 results)