2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of methods for analyzing anharmonic phonons and their application to structure searches in dense hydrogen and hydrides
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21K03437
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 和多加 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (00361197)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水素化合物 / 非調和格子振動 / 高圧 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
非調和格子振動を扱う self-consistent harmonic 近似(SCHA)では、Gibbs-Bogoliubov 不等式を利用した自由エネルギーの最小化が、一連の方程式を自己無撞着に解く形式に帰着される。比較的単純で扱いやすい手続きだが、原子間ポテンシャルが二体の和で表せる場合にしか適用できず、また、構造最適化も簡単には実行できない。そこで2021年度は、これまでに開発してきたSCHAに加え、自由エネルギーを直接最小化する形式の stochastic SCHA(S-SCHA)用コードを開発した。これにより、水素化合物のように複雑な構造をもった系で特に重要となる、三体原子間ポテンシャルが扱えるようになった。また、非調和零点エネルギーを含めた構造最適化も自動で実行可能となっている。この構造最適化の利点は、単純に正確な構造探索に役立つということ以外にも、原子位置を固定したSCHAでは原理的に扱えない、奇数次の非調和性の影響を計算結果に反映させられるという事実にもある。 S-SCHAでは、自由エネルギーを求める際の統計力学的平均は、多数のサンプリングされた構造による統計和から求められる。このため精度が要求される場合には、サンプリング数が必然的に多くなり、計算にも時間がかかる。この点を改善する目的から、並列計算に対応できるようにS-SCHA用コードを開発し、計算の高速化も図っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を遂行する上で重要なのが、S-SCHA用コードの開発と、高精度かつ汎用性の高い原子間有効ポテンシャル作成手法の確立である。2021年度の段階では、S-SCHA用コードの開発にやや時間を費やした。このため、三体原子間有効ポテンシャルを作成する手続きが、まだ十分に確立できていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
三体原子間有効ポテンシャルの作成手続きを改良し、構造間の自由エネルギー差を議論できる程度にまで精度を高める。信頼性の高い有効ポテンシャル作成手法を確立したのち、まずは、S-SCHAを高密度水素に適用する。調和近似の範囲では、水素の圧力誘起分子解離において、計算は実験より遥かに低い分子解離圧を与えてしまう。この矛盾がS-SCHAにより解消されるかを確認する。その後、S-SCHAを高圧水素化合物に適用し、新たな高温超伝導相の探索を行う。
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Causes of Carryover |
学会への参加等を予定していたが、それらを取りやめたため次年度使用額が生じた。2022年度における学会参加費として使用することを計画している。
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