2023 Fiscal Year Research-status Report
Thermodynamic study on FFLO states and spin density waves in unconventional superconductivity
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21K03443
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田山 孝 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (20334344)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非従来型超伝導 / SDW秩序 / FFLO相 / 元素置換効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、液体ヘリウム供給のトラブルによりCe1-xNdxCoIn5の低温実験が行えなかった。そのため、本報告ではイジング系反強磁性体であるSmPt2Si2の低温実験およびデータ解析の結果について代わりに報告する。
SmPt2Si2はc軸方向に強い磁気異方性を持ち、5.1Kにおいて部分無秩序状態をもつ反強磁性転移を示す。さらにTg=2.4K以下では、部分的無秩序状態の磁気モーメントだけがスピングラス状態を形成しているのではないかと考ている。しかしながら、このスピングラス状態は通常のスピングラスとは明らかに異なり、横磁歪において非常に早い緩和現象を示す。そこで,この異常緩和現象の緩和機構を明らかにするために、磁化測定、磁気トルク測定、および縦磁歪測定を行った。その結果、残留磁化においては緩和現象が確認されなかったが、残留磁気トルク,縦磁歪測定においては明瞭な緩和現象が確認された。このことは、横磁歪における早い緩和現象はSmイオンの磁気モーメントのc軸方向の成分によるものではなく、c軸方向に垂直な小さな磁化の成分によって引き起こされていることを示唆する。また、温度が十分に低いことからこの緩和現象は量子ゆらぎと関連している可能性がある。この反強磁性と異常スピングラスの共存状態はまだ未解明な点が多く、今後もさらなる実験を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、多量の液体ヘリウムが必要とされるが、大学内の液体ヘリウム液化装置におけるヘリウムガス回収バックのゴムの劣化による複数箇所の漏れと、能登半島地震による回収圧縮機の漏れのトラブルが発生した。これらのトラブルにより、ヘリウムガスが不足し、実験に必要な液体ヘリウムの供給が滞った。結果として、実験の進行に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在も液体ヘリウムの供給状況は改善されておらず、学内での液体ヘリウムの利用には制限が設けられている。そのため、今後の研究計画の正確な見通しを立てることが難しい状況である。しかし今年度中には実験を完了し、研究成果を論文にまとめることを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症により学内での研究活動が制限されたため、本研究費の大部分に計上していた液体ヘリウムや液体窒素の寒剤費を使用することができなかった。また熊本大学で開催予定だった2020年秋季大会と、東京大学駒場キャンパスで開催予定だった第76回年次大会(2021年)の日本物理学会の2つの大会が、新型コロナウイルス感染症の拡大状況ならびに拡大防止の観点から、現地会場での開催は困難と判断され、オンライン方式での開催となり、その旅費を使用することができなかった。今年度予算は、昨年同様、主に寒剤費と旅費に充てることを予定している。
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