2022 Fiscal Year Research-status Report
Experimental study for magnetic transport properties in the nonsymmorphic magnets
Project/Area Number |
21K03445
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村川 寛 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (40611744)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 巨大磁気抵抗効果 / 磁気ポーラロン |
Outline of Annual Research Achievements |
低キャリア密度層状磁性半導体単結晶CeTe1.83Sb0.17を合成し、2Kにおいて0.4テスラの低磁場で電気抵抗率が4桁程度減少する巨大な磁気抵抗効果を観測した。さらに、この磁気抵抗効果は特定の磁場方向下でのみ発現するため、電気抵抗率は磁場方向を変えることで4桁の異方性を示す。電気抵抗率の磁場方向依存性を詳細に測定したところ、本物質では電気抵抗率の値がc軸方向に射影した磁場成分(c軸方向の磁化の値)で決まることが明らかとなり、c軸方向の強制強磁性状態で電気抵抗率が一定値に収束する振る舞いが観測された。この物質の巨大磁気抵抗効果の起源を明らかにするために、キャリア密度が桁で異なる単結晶CeTe2-xSbxを合成して測定を行った。その結果、キャリア密度が一定値以下の希薄な場合にはキャリア密度に依存せずに2~4桁程度の巨大な磁気抵抗効果が発現することがわかった。さらに磁化と電気抵抗率との対応を調べると、いずれの試料ともc軸方向の強制強磁性状態で電気抵抗率が一定値に収束する結果を得た。これらの結果は、本物質中で電荷キャリアは磁気ポーラロンを形成しており、磁場印加により反強磁性状態から強制強磁性状態へ変化する過程で磁気ポーラロンの移動度が劇的に変化することによって巨大な磁気抵抗効果が発現することを示している。磁性イオンをCeから他の希土類元素に変えた物質の単結晶も複数種類合成して磁気抵抗効果の測定を行ったが、その変化はわずかであった。この結果は、Te層の伝導電子と磁性元素の4f電子との相互作用がCeに比べて小さく、磁気ポーラロンが形成されにくいことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までに、研究対象とする物質で観測された巨大磁気抵抗効果の起源が磁気ポーラロン機構によるものであることを実験的に明らかにすることができた。これらの結果については2件、学術論文誌に掲載した。さらに、Ce以外にも複数種類の希土類元素で同じ構造の単結晶を合成し、それぞれについて磁気抵抗効果の測定を行った。その結果、本物質群における巨大磁気抵抗効果の発現にはCeが最適な磁性元素であることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
CeTe2では圧力下で超伝導が発現することが報告されているが、その詳細については研究が進められていない。これまでの研究期間で、キャリア密度の制御方法や他の希土類元素での合成方法についてもある程度確立することができたので、今後は圧力下超伝導状態のキャリア密度依存性を詳細に調べることで、超伝導発現のための最低キャリア密度や磁気抵抗効果との関係性について明らかにしていきたいと考えている。さらに、希土類元素を変えた結晶についても超伝導の観測を試みて、磁性との関係性についても解明していきたい。
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Research Products
(4 results)