2021 Fiscal Year Research-status Report
Magnetoelectric effect study of metallic compound with ferro toroidal state
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21K03447
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
本山 岳 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (20360050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 明 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (10302639)
阿曽 尚文 琉球大学, 理学部, 教授 (40313118)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電気磁気効果 / 強トロイダル状態 / 非共型結晶 / 反スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が発見した重い電子系反強磁性化合物Ce3TiBi5にはc-glide対称操作によって1つのサイトに結び付けられるCeイオンがあり,その構造は非共型空間群であるP63/mcmに属する。Ceイオンはc-glide操作によってCeジグザグ鎖構造を形成し,そのサイトには空間反転対称性がない。このため奇パリティ多極子秩序が実現する環境が整っている。我々はこのCe3TiBi5の反強磁性相において「電流に誘起され磁場には依存しない磁化」を観測した。この電流誘起磁化は強トロイダル秩序状態(奇パリティ多極子秩序)に由来すると考えられている。 この新しい電気磁気効果の発現に関しては対称性に基づいた理論が構築されているが,その定量的な評価に関しては未だ顕著な進展が見られない。希土類・遷移金属・卑金属元素の置換により同型化合物が多く作成できる315系化合物(Ce3TiBi5と同型構造を持つ化合物を315系化合物と呼ぶ)の利点を生かし,反スピン軌道相互作用などの効果を系統的な評価に取り組んでいる。物質開発において我々が発見しているCe3ZrBi5や過去に報告のあったCe3TiSb5およびウラン315系化合物の純良試料育成とその評価を進めつつ,新物質Ce3ZrSb5を発見している。スピン波励起状態などが期待される有限温度で現れる電気磁気効果についても未解明であるため,スピン波励起に由来するトロイダル励起状態を明らかにするための中性子散乱実験を開始した。また,電流誘起磁化の逆相関効果である磁場誘起電流や磁場整流効果などの金属に特有な現象を探索に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ce3TiBi5についてはBiセルフフラックス法による試料育成条件が確立しているが,Ce3TiSb5においてはSbセルフフラックス法で単結晶試料が育成できずSnフラックス法によって単結晶が育成される。しかし,まだ試料の純良化が十分ではないため単結晶育成条件の探索を進めた。今後も測定結果のフィードバックによる純良化が必要となるかもしれないが,現在までに不純物の少ない純良で大型の単結晶試料の育成に成功している。さらに遷移金属と卑金属の組み合わせから,これまでに報告のないCe3ZrSb5の結晶育成にも取り組み,Ce3TiSb5と同じ条件によって単結晶育成に成功した。これによりCe3MX5(M = Ti, ZrおよびX = Sb, Bi)の4種類の単結晶育成を達成した。これらの磁気特性を比較した場合,4.9 Kから5.2 Kで反強磁性秩序を起こすことは類似しているものの,Bi化合物とSb化合物の顕著な違いとして秩序状態における磁気モーメントの向きが異なっていると,磁化率の温度依存性の異方性から推測された。従って拡張多極子の概念によって315系化合物で実現する反強磁性相を分類した場合,異なる秩序状態に属することが期待され,異なる交差相関応答が期待される。ウラン315系化合物の育成については,東北大金研の共同利用研究には採択されていたが,共同利用出張の機会を得ることが出来なかった。 Ce3TiBi5およびCe3TiSb5で実現する磁気秩序状態を明らかにするため,粉末試料を用いた中性子弾性散乱実験を開始した。Ce3TiSb5においては磁気散乱ピークの観測に成功し,現在解析を進めている。Ce3TiBi5においては,磁気散乱ピークが観測できなかったためにその原因を追究している。
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Strategy for Future Research Activity |
Bi化合物とSb化合物の磁気秩序状態における磁気モーメントの向きの違いの原因として,構造パラメータの違いによるCeイオン間の磁気相間の変化や,BiとSbの置換による反スピン軌道相互作用の強度の変化が考えられる。前者においてはBiとSbの置換によりCe-Ce間の縮小が期待され,後者では同族のBiとSbにおいては原子番号の大きいBiの方がより強い反スピン軌道相互作用が働いていると期待できる。これを検証するために,圧力による磁気秩序状態の変化を明らかにすることを試みている。 Ce3TiSb5においては大きな単結晶試料が得られるようになってきたので,電流誘起磁化測定を推進する。磁気秩序基底状態の違いと電流誘起磁化現象の異方性との相関について明らかにする。Ce3ZrBi5やCe3ZrSb5においても大型純良単結晶試料を育成し,これら化合物の電流誘起磁化の比較より定量的な評価を行う。ウラン315化合物の作成にも新たに取り組む計画を立てている。 現在,磁気秩序状態はマクロ測定からの推定に過ぎない。奇パリティ多極子秩序状態の決定や交差相関応答の有無については磁気秩序状態の決定が必須であるため,中性子散乱実験を引き続き計画している。 磁場誘起輸送現象の変化や磁場誘起の整流効果などの金属に特有な現象を探索するため,交流電気抵抗測定を計画している。交流信号の高次の応答に注目して非線形応答現象の観測を目指している。
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Causes of Carryover |
分担者(阿曽氏:琉球大学)が予定していた国内出張がコロナ禍のため当年度に遂行できず、国内出張を延期し次年度に行う予定としたため。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 重い電子系超伝導体UPt3の磁場侵入長の圧力依存性Ⅱ2022
Author(s)
星川昌嗣, 石井優海, 木村勇一郎, 岩永千春, 山口明, 住山昭彦, 本山岳, 木村憲彰, 山本悦嗣, 芳賀芳範, 大貫惇睦
Organizer
日本物理学会第77回年次大会
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