2023 Fiscal Year Research-status Report
Spin current generation by vorticity in quantum fluid
Project/Area Number |
21K03456
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
堤 康雅 関西学院大学, 理学部, 講師 (10631781)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | スピン三重項超伝導体 / トポロジカル超伝導体 / スピンテクスチャー / 磁束渦糸 / マヨラナフェルミオン / 超流動ヘリウム3 / アンドレーエフ反射 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近になって超伝導相が発見されたUTe2はスピン三重項超伝導体であることが強く示唆されており、実験・理論の両面から活発な研究が行われている。スピン三重項超伝導体はクーパー対がスピン自由度を持っているので、超伝導体に磁束渦糸として侵入した磁場がクーパー対のスピンに作用することで、クーパー対のスピンの向きが空間変調した構造が安定となる場合がある。このような空間構造はスピンテクスチャーと呼ばれ、磁束渦糸まわりにスピン流を発生させる。令和4年度までの研究では、微視的理論により安定なスピンテクスチャーが存在することを示している。 今年度の研究では、スピンテクスチャーの低エネルギー励起としてマヨラナフェルミオンが存在することを明らかにした。磁場下のUTe2では時間反転対称性が破れているが、結晶の鏡映操作と時間反転操作を組み合わせた磁気鏡映操作に対する対称性を持っているので、UTe2はトポロジカル結晶超伝導体として振る舞う。トポロジカル結晶超伝導体のトポロジカル不変量を解析することで、マヨラナフェルミオンが単一のゼロエネルギー励起として単位格子中の二つの位相欠陥に局在することを示した。この研究成果は、論文としてまとめており、学術雑誌に投稿中である。 量子流体である超流動ヘリウム3についても、液面で粒子型励起がホール型励起として反射されるアンドレーエフ反射についての研究を行った。現実的なモデルでのアンドレーエフ反射率の計算はこれまで数値計算でしか行われていなかったが、本研究では解析的な式でアンドレーエフ反射率を記述することに成功した。スピン自由度を持つ超流動ヘリウム3では、アンドレーエフ反射の際にスピン反転も起こるが、スピン反転確率も解析的に示しているので、スピン流についても見積もることができる。この成果についても論文を学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初に計画していた液体ヘリウム3の常流動状態、超流動状態でのスピン流の研究は順調に進展している。 これらに加えて、当初は研究対象として考えていなかったスピン三重項超伝導体であることが強く示唆されているUTe2の研究も進展しており、論文としてもまとまっている。当初の計画にはなかった系でのスピン流生成の研究に発展しており、本研究課題が計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
UTe2でのスピンテクスチャーの提唱は、実験グループからも注目されているので、スピンテクスチャーの空間構造の多様性に注目して安定する様々な構造を明らかにする。UTe2は当初の計画には無かった研究対象ではあるが、理論・実験両面からの研究が精力的に行われており、物性の解明が急がれる対象であるので、集中した研究を行う。
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Causes of Carryover |
今年度までの研究が当初の計画以上に進展しているので、次年度も国際学会での発表を予定している。近年高騰している海外出張旅費を捻出するため、次年度使用額として研究費を残すことにした。 購入を計画しているワークステーションについては、旅費との兼ね合いで予算を決めることにする。
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Research Products
(2 results)